Stap事件 ― 理解できない最大の謎? 教えてください!若山先生

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(出典 yoshiokan.5.pro.tok2.com )

 「私は決して逃げない」と語った若山先生! なぜ逃げたのですか?

 

 STAP細胞研究の最大の成果は何か?

それは小保方氏の発見した、物理化学的な刺激によって成したSTAP細胞が基本となっていることは言うまでもないが、若山氏が従来の人工万能細胞(ESやiPS)を凌駕したSTAP細胞の万能性を実証し、幹細胞株化で実用性を確立した事こそが最大の成果であると言って間違いないだろう。

それこそが、理研が是が非でも獲得を図った成果であった。

マスメディアを通して一躍注目を集めたのは、若き女性研究者の小保方晴子氏だった。

ところが、その華々しい成果発表者で論文筆頭者である小保方氏の陰にかくれて、当時、若山氏の印象はほとんど残っていなかった。

しかし、当該科学コミュニティーの研究者や世界中の科学者達は、そこで発表された鮮烈で衝撃的な常識を覆す大成果を羨望の眼差しで迎えていた。

その立役者が、実は若山照彦氏であったことをどけだけの人が知っていたであろうか?

 

ここで、著名な生物学者 福岡伸一氏のSTAP論文発表当時の評価を見よう。

同氏の著書は我妻もファンである。生命の不思議を分かり易く解説してくれるからだ。

ソトコト(  www.sotokoto.net/  )の連載コラム「福岡伸一の生命浮遊 vol.120 “STAP細胞へに逆襲”と言う記事がある。( http://www.sotokoto.net/jp/essay/?id=104 )

その中に「STAP細胞」nature論文発表当時の感想が的確に述べられている。

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これまで再生医療の切り札として研究が先行していたES細胞やiPS細胞(いわゆる万能細胞)の作製よりもずっと簡便(弱酸性溶液につけるだけ)なのにもかかわらず、より受精卵に近い状態に初期化できている(STAP細胞は、胎盤にもなりうるというデータが示されていた。胎盤となる細胞は受精卵が分裂してまもなく作られる。ES細胞やiPS細胞はもっとあとのステージの状態なので逆戻りして胎盤になることはできない)。ES細胞のように初期胚を破壊する必要もなく、iPS細胞のように外来遺伝子を導入する操作も必要ない。ただストレスを与えるだけで、細胞が本来的に持っていた潜在的な多分化能を惹起させうるという、これまでの常識を覆す、意外すぎる実験結果だった。私の周囲の幹細胞研究者にも聞いてみたが、皆一様に大きなショックを受けていた。それは正直なところ嫉妬に近い感情だったかもしれない。

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特に、「ES細胞やiPS細胞(いわゆる万能細胞)の作製よりもずっと簡便(弱酸性溶液につけるだけ)なのにもかかわらず、より受精卵に近い状態に初期化できている(STAP細胞は、胎盤にもなりうるというデータが示されていた。」というSTAP細胞が持つこうした万能性こそが世紀の大発見として迎えられたことが分かる。

論文発表当初、福岡伸一氏も「発見者の小保方晴子博士が若い理系女子だった」と記述しているように、このSTAP細胞の驚異的な現象の発見は、若き女性研究者の小保方晴子氏によって発見されたものだと、ほとんどの人が思ったのではなかろうか?

しかし、実は小保方氏は「物理的あるいは化学的な刺激で体細胞がある程度未分化状態になって多能性を示すようになることを発見した」のであって

STAP細胞論文に述べられた「より受精卵に近い状態に初期化された万能性の発見」をしたのは若山照彦氏なのである。

 

小保方晴子氏の手技によって発見されたのは、Oct4陽性スフェア細胞が3杯葉に分化する多能性であったが、高度な胚操作技術を要し、より高度な多能性の立証手段とされるキメラマウス作製試験は若山氏が依頼されていたことは周知のとおりである。

若山氏は、独自に計画を作成し、

小保方氏に生後一週の赤ちゃんマウスを渡し、小保方氏がその脾臓細胞を取り出して分画して得たリンパ球を一週間酸処理して作製したOct4GFP陽性スフェア細胞塊(STAP細胞)を受け取り、その細胞塊を切り刻んだものから初めてキメラマウス作製に成功した。 

そればかりでなく胎児と胎盤に分化できる能力を独自の観察で発見し、写真を自身で撮影している。

また、残りの増殖性の無いスフェア細胞から、無限に増殖するSTAP幹細胞株と同じく無限増殖しかつ胎児と胎盤に分化するFI幹細胞株をも樹立した。 

こうした世紀的な大発見大発明を小保方氏の作ったスフェア細胞塊から発見し発明した、キメラマウスやSTAP幹細胞やFI幹細胞を自力で見極めているのだ。

このことは隠しがたい事実である。

小保方氏が確認したテラトーマとか細胞増殖率データとかメチル化データのミスとか捏造とかの次元とはわけが違う。

キメラマウスの評価が確実にあるだけでも明らかに確実な多能性を証明していることになる。

更に、胎児や胎盤を形成することを発見したとなれば、文句なく万能性を評価した事になるのだ。

それは既存のES細胞やiPS細胞では達成できないSTAP細胞特有の万能性だった。

 

桂調査委員会が判定をした4つ論文不正は論文倫理問題には相違ないが、STAP細胞特有の万能性が確たるデータで証明された以上、科学的な成果は揺るぎの無いもので、それがSTAP論文の本丸だった。 

そのような確信を抱いて当然な若山氏が、その論文の本丸に対して的外れともいえそうな外部からの指摘に狼狽えたのは全く理解できない。

些末な不正と指摘された部分は修正または削除しても良いはずであった。

論文撤回など全く必要はないという自負があるべきではないのか。

 

ところが、2014年3月10日、

若山氏は「STAP細胞が存在する確信がなくなった」といい、論文の撤回を呼びかける。

そしてNHKのインタビューに対し、

「自分が担当した実験については正しいと信じているが、前提となるデータの信頼性に確信が持てなくなった。一体、何が起ったのか科学的に検証することが論文の著者としての責任だと考えている。何より私自身、真実が知りたい」

と述べている。

「自分が担当した実験については正しいと信じている」のであるなら、小保方氏のスフェア細胞塊から独自に実験したその万能性を示すデータが、小保方氏によるテラトーマ写真など多能性評価の次元を超える評価結果である以上、引き続き述べた「前提となるデータの信頼性に確信が持てなくなった。一体、何が起ったのか科学的に検証することが論文の著者としての責任だと考えている。何より私自身、真実が知りたい」という思いに何故なるのか、論理的に理解ができない。

そのようなことをマスコミを通して発言することの意味はさらに理解できない。

この場合に当然と思われる、若山氏がすべき対応は小保方氏に対して指摘された不正の原因と対策を著者間で打合せることではなかったかと思うのだ。

その上で、論文の本質は揺るぎの無いものだという表明をすべく著者全員で努力し対処していくという筋書きが、最も適切な処方箋と思われるのだが・・・・・?

 

若山氏の一体どこに懸念すべき落ち度があったというのだろうか? 

あれほどES細胞混入の無い環境に気を配り、小保方氏には若山氏が指定したマウスを使わせ、小保方氏を監視できる部屋に同居して、2年間一緒に研究生活していた事実がある。

それにも関わらず、余程の杜撰な管理指導体制でない限り発生するはずの無いES細胞の人為的な混入操作という陳腐な恐怖感をもつのは余りにも異常である。 

例えES細胞混入がなされたとしても、若山氏の発見したSTAP細胞の万能性やFI幹細胞の性質を説明できないことは若山氏が一番解っているはずだ。             

更に、若山氏が達成目標としていたSTAP幹細胞やFI幹細胞の実験結果を予め予測してES細胞やTS細胞を適切にSTAP細胞の代わりに若山氏に渡さねばならないことになるが、そんな芸当は到底不可能なことであろう。

そんなことをして、特有の増殖性や万能性を若山氏が発見することを予測する人がいたのなら、その人は結果を予見する超能力者である。

結果論として、他人は好き勝手な尤もらしい憶測を陳述するが、科学的とは言えない。 

ES細胞とTS細胞を混ぜてFI幹細胞になる実証をした人はいただろうか?

ES細胞とTS細胞を混ぜて、キメラマウスと、胎盤を作った人がいるだろうか?

胎盤を調べて、光っているのはキメラマウスから流れ込んだ血液であることを立証した人がいるだろうか?

そのような情報は見たことも聞いたこともない。

逆に、丹羽氏は若山氏が作った胎盤を顕微鏡下で観察し、TS細胞ではなくSTAP細胞だと立証してくれた。

したがって、そのような人為的な不正操作によって若山氏の実験に異常が発生する理由にはならない。

 

但し、そうした人為的な操作が可能な唯一の例外が無いわけではない。

それは万能性の実験をしていた若山氏が、意図して混入操作することに限ってしか有り得ないことである。

しかし、若山氏は自分の実験は正しいと主張していたのであるから、全く左様な憶測は心外であろう。

 

桂調査委員会の出したES細胞混入との結論は、残存する若山氏の作った幹細胞株試料と残されていなかったはずのES細胞FES1の遺伝子の類似性を調査しただけの結果から、STAP細胞ES細胞であるとの可能性を示したに過ぎない。

その後の様々な人の検証でその信憑性がすでに失われている。

既存のES細胞やTS細胞を用いた実証データがないのは科学的論証性の欠如という他はない。

笹井氏が問題発覚後の記者会見で、STAP細胞の実在性を問われて、「反証仮説として私の中で説得力の高いものは見出していない」と述べたことは、現時点も全く変わりはないと言える。 

ここまで、述べてきたことを要約すれば、次の通りである。

小保方派の発見したSTAP細胞や、若山氏の発見した STAP細胞の万能性及び無限増殖するSTAP幹細胞とFI幹細胞が、ES細胞やTS細胞による捏造の証拠は依然として科学的には証明されたとは言えない。 

そして、極めて不自然で理解しがたい謎が残った。それは、若山氏がなぜか突然に自信を失い、

「自分が担当した実験については正しいと信じているが、前提となるデータの信頼性に確信が持てなくなった。一体、何が起ったのか科学的に検証することが論文の著者としての責任だと考えている。何より私自身、真実が知りたい」

と述べて、論文撤回を率先したのかということだ。 

例え、小保方氏に渡したマウスの遺伝子背景が異なったにしても、既存の万能細胞では有り得ないSTAP現象の大発見をし、実用可能な幹細胞株樹立をしたのは若山氏をおいて他にない偉大な事実を置き去りにするわけにはいかない。

そのような偉大な事実を若山氏はいとも簡単に放棄しようとした。

しかも、守ろうとした小保方氏や笹井氏を犠牲にしてまで、その貴重な事実を荼毘に付そうとした。

 

「私は決して逃げない」と語った若山先生! なぜ逃げたのですか?

 教えてください!若山先生。

 

 

 

Stap事件 ― 佐藤貴彦著「STAP細胞 事件の真相」評

 

◎本書を読んで、事件の中心人物は若山氏だと改めて確認できた!

 

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先ごろ出版された佐藤貴彦著「STAP細胞 事件の真相」(星雲社)には、Stap事件が如何に虚構の産物だったかが理解できるような着眼点が整理され、解説されている。

下記のとおり十章に渡る目次内容で、事件の本質が分かりやすく構成されている。

我々がマスメディアを通して得たStap事件の常識が、どうやら間違った基礎の上に築かれていたという、そのいい加減なシナリオ作りの中心人物が若山氏であり、それをほぼ鵜呑みにして権威ある委員会が公式にまとめ上げた異様な事件の結論と施策が理解できるようになっている。

そして、でっちあげられた世相を迎合して、小保方氏の博士号を剥奪した早稲田大学の非情で浅はかな対応ぶりも語られている。

この事件の真相が確かに見えてきているのではないだろうか。

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= 目次 =

第一章 でっち上げられた窃盗容疑

第二章 悪意の証明

第三章 小保方氏の不正問題

第四章 過剰な期待

第五章 画策

第六章 自己点検検証委員会の欺瞞

第七章 改革委員会提言書の異常性

第八章 桂調査委員会報告書の矛盾

第九章 『あの日』について

第十章 小保方氏の博士論文

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佐藤氏の前作「STAP細胞 残された謎」(星雲社)は、小保方晴子著「あの日」(講談社)よりも前に出版されたにもかかわらず、マスメディアを通してSTAP細胞は小保方氏による捏造研究だったという、何かが吹っ切れないまま決着したかのような常識を考え直させるのに十分な問題点が整理されていた。

そこには、小保方晴子氏に対して、論文不正ばかりでなく研究捏造の主人公であるばかりでなく博士論文不正をも行った人物だと公的に結論付けされたポイントが科学的かつ論証的に考察され、その結論を鵜呑みにできない疑問点が提示されている。

結論として、科学的論証としてSTAP細胞ES細胞による捏造との判定には論理的に大いに疑問あるこの事件であったのに、当時は疑いもなく大々的に進行した異常性を以下の3つに整理している。

  1. 報道の過熱と事件当事者に対する社会的制裁の異常性 (笹井氏の自殺にまで発展)
  2. 論文不正の責任を小保方氏1人に負わせた異常性
  3. 小保方氏に対する執拗な追及の異常性 

そして、「この事件は、きわめて劇場的、魔女狩り的に進行し、ただひたすら小保方氏を叩くだけの報道ばかりが繰り返されてきた」一方的なバッシングに警告を与えた書であったといえる。

 

あれから1年後の今回の「STAP細胞 事件の真相」で注目すべき点は、この事件の中心人物は、小保方氏ではなく、理研や報道陣に積極的に情報を提供した共同研究者で上司だった若山氏であることが数々の不思議な独善的言動記録を示しながら解説されていることだ。

そこに、小保方氏や笹井氏他共著者と同じ論文不正事件調査対象者であるはずの若山氏が、事件の主因はあたかも小保方氏のSTAP細胞ES細胞だったとするストーリーを演出して拡散していったことが如実に言及されている。

さらに、若山氏に協力的な遠藤高帆氏等による検証不十分なSTAP細胞=ES細胞情報拡散、またそうした情報を都合よく脚色したNHK偏向報道(NHKスペシャル)による印象操作を明白にしている。

以上の内容は、本書の第二章~第五章に仔細に論説されている。

 

実は本書の第一章に、世間に決定打を突き付けたかに見えたあの石川智久氏の刑事告発は「でっちあげられた窃盗容疑」だったことを、著者が明確に示したことによって、上記の若山氏達の言動や報道内容が如何にいい加減なものだったかが鮮明に浮き彫りになった。

全く事実と無縁の虚構の情報を世間に広めたものだと言っても過言ではないだろう。

第一章は“STAP細胞は小保方氏が捏造したもの”という植え付けられた常識の論理的破綻を刻印した章である。

このことから、「STAP研究を主導したのは若山氏」であると著者は書いているが、小保方氏を悪者にしてSTAP研究の抹殺を主導したのも若山氏だったことが明確化するのだ。

 

そして、第六章から第八章にはこうした若山氏の自己中心的な言動とその協力者たちの偏向情報に迎合した世相作りが進む中で、正にそうした虚構のストーリーに当たり障りなく公式見解を整備し、事件を終息させていった三つの委員会の内容が整理されている。

各委員会のまとめた内容は、ほぼ若山氏らの流布した事件成立ストーリーを是とする立場に立って整備したがために、欺瞞や異常性や矛盾に満ちたものであるとの分析は当然の帰結として理解できる。

 

第九章では、以上の章で解説された若山氏の特異性が、「あの日」で小保方氏が告白した内容に照らしても明白であることを示している。

第十章「小保方氏の博士論文」においては、世相に迎合し、体面ばかりを気にして、博士号剥奪という主客転倒、責任転嫁の結論を下した早稲田大学の愚かさが良く判るようになっている。

 

本書を読んで、Stap事件の元凶は若山氏の異常ともいえる特異な言動にあることは、当らずとも遠からずと考えざるを得ない。

そして、彼の言動を利用することで、食物連鎖的な利権構造のメカニズムが作用して、見かけ上、問題は丸く収められたということが良く理解できる。

その犠牲になったのが、小保方氏であり、笹井氏であったということである。

 

若山氏は、理研の結論に異論を示さず、その後一切STAP細胞を語ることが無いのは、正に自身がでっあげた虚構のストーリー通りに決着したからに他ならないと私は考えていたが、本書によってその確信が増した。

未完成であったにもかかわらず、あたかも実証したかのように論文や特許に美しく表現させた、若山氏のオリジナリティーであるところの万能細胞(STAP幹細胞、FI幹細胞)の成果の先取りを画策した虚構シナリオの発覚を恐れて、小保方氏によるSTAP細胞=ES細胞による捏造という代替原因を作り上げて世論を欺くことに成功したとしか考えられない。

 

東京大学の研究不正も取り上げられて説明されていたが、研究開発戦略を真面に暴いていけば、若山氏のように責任逃れしたくなるような過酷なリスクを背負った研究者は山ほどいるのではないかと私は思うのである。

現代科学技術の過激な競争の中で、利権が絡む発明競争は実際はきれいごとばかりでは済まされない深刻さがあるのではなかろうか。

特に、特許戦略を制していくためには、脚色やむなしという局面もあるだろう。

密かにエア実験や虚構のデータの仮置きによってアイディアの先取りを担保することになる。

そこに正義のポピュリズムによって、虚構の世界が暴かれ、研究不正と評されるのは研究開発者にとっては致命傷になってしまうが、恐らくそのようなリスクを多少なりとも持って成果主義的な研究競争を行なっているのが実態ではなかろうか。

Stap事件は、現代社会のデリケートな問題の闇から発生した事件であったと思うのである。

 

 

本書によって、成果主義の最先端研究の代表的な研究者の1人である若山照彦氏がSTAP研究を主導しながら異常な研究終息を謀ったことが明白となった。

しかし、本書の内容においても語られていない、依然として謎の部分が残されたままになっていることを最後に述べたい。

それは、若山氏が発想して試作した“iPSに勝る万能細胞”を増殖性の無いSTAP細胞を無限増殖する幹細胞株化(STAP幹細胞、FI幹細胞)の実体である。

これまでの解析結果に従えば、従来の万能細胞のES細胞とTS細胞による開発ターゲット達成モデルだった可能性が高い。

若山氏は目標とするSTAP細胞の増殖力や多能性現象を設定して、研究戦略を考えていたに相違ない。

それは研究者なら当然行うであろう思考方法の範疇ではなかろうか。

しかし、小保方氏も不思議に思った、彼女が再現できない若山氏の作ったキメラマウスやSTAP細胞の増殖能力を作り出した、若山氏の「特殊な手技」の実体は本当にES細胞とTS細胞利用以外のアイディアがあっての事だったのだろうか。

恐らく、若山氏は科学的解決策を構想していたに違いない。

独自の発想であって未完成なる技術がゆえに、種を明かすことはしなかった。

 

それは、ひょっとしたら和モガ氏が想定した共培養法であった可能性も有り得えたかもしれない。

(詳しくは「「STAP細胞事件」-崩れていく捏造説の根拠(1)~(3)」を参照)

http://wamoga.blog.fc2.com/blog-entry-128.html

http://wamoga.blog.fc2.com/blog-entry-129.html

http://wamoga.blog.fc2.com/blog-entry-130.html

  1. STAP細胞+内部細胞塊」→(ACTH+LIFで培養?)→STAP幹細胞+ES細胞
  2. STAP細胞+栄養膜細胞(TS細胞)→(FGF4培養)→FI幹細胞+TS細胞」

 

論文に記載された方法とは異なってもSTAP細胞増殖技術を獲得しさえすれば論文データ以上に本物になる手はずだった。

しかしながら、STAP細胞を認めて、それを用いて増殖力を持たせるアイディアを実現させる具体的手法を確立には想定以上の困難さ抱えていたに違いないと思うのである。

論文の再現が急がれるのに見通しが立たない。

論文や特許には捏造したターゲットモデルのデータが残されている。

後に引けない厳しい立場に陥っていたに違いない。

そして、テラトーマ画像の取り違え発覚を機に、若山氏は保身の決断をしたのではないだろうか。

 

若山氏は黙して語らず。

若山氏が模索した研究戦略と研究内容がブラックボックスになったままになっている限り撤退の実相は謎のままである。

 

Stap事件 ― 理研スーパー法人化の荒波に呑み込まれた小保方氏

 

 1. 理研スーパー法人化の代償  

2016年10月1日付で理化学研究所は悲願の特定国立研究開発法人(スーパー法人)となった。

本来は2015年4月発足予定だったが、STAP細胞問題に関係して、下村文科相が「国民からみても改革して研究不正や疑義の問題が解決したととれれば」との条件を示し、理化学研究所の改革を求めていた。

 

而して第9代理事長 野依良治氏から前京都大学総長の第10代松本紘氏に体制も変わり、理研はスーパー法人となったのだ。

(8省庁31国立研究開発法人の内、文科省所管の物質材料研究機構と理化学研究所及び経済産業省所管の産業技術総合研究所の3法人が特定国立研究開発法人に指定された。

 

2014年当時は独立行政法人、2015年4月に国立研究開発法人そして2016年10月1日にスーパー法人となっていく中で、当時の神戸研究所(兵庫県神戸市)の 発生・再生科学総合研究センターは、多細胞システム形成研究センターと改変された。但し、英語名はCenter for Developmental Biology(CDB)で変更は無い。当時のCDBセンター長の竹市 雅俊は高次構造形成研究チームリーダーとなり、センター長は濱田博司氏になっている。

 

Stap事件は、2014年に独立行政法人理化学研究所が起こした事件である。

当時の理研はその責任を取り、STAP論文は撤回させ、STAP特許出願人として米国との共同から撤退し、STAP:研究をES細胞による捏造研究として結論付けて、行政指導の下、研究不正を中心に運営理念や組織体制の改革を実行したことで終結している。

 

「科学における不正行為:日本における研究の整合性ガイドライン(Scientific misconduct: Research integrity guidelines in Japan)」Nature 514, 35 (02 October 2014) doi:10.1038/514035a Published online 01 October 2014 には次のように書かれている。(和訳:ryobu-123)

文部科学省が最近発表した研究整合性に対する日本の新ガイドラインの示すところでは、研究不正行為の抑制を希求するとしている。(参照: T. Tanimoto et al. Nature 512, 371; 2014).

従来は日本の制度では、科学者の不正行為の責任回避傾向があった。改訂されたガイドラインの下では、例えばデータ操作や捏造を行なった科学者に対して、研究機関は適切な措置を講じなければならない。不履行の場合、文部科学省は当該研究予算をカットすることになる。来年の理研の要求予算はすでに20%近く(121億円、111百万米ドル)を、文部科学省は減額している。これは今年2つのSTAP幹細胞論文発表し、その後撤回するという不手際に対するペナルティである。」(参照: Nature 511, 112; 2014)

 

文部科学省では当時、研究活動における不正行為の事案が後を絶たず、昨今、これらの不正行為が社会的に大きく取り上げられる事態となっていることを背景に、研究不正対応のより厳格なガイドラインを作成しつつある最中の事件だった事が分かる。(http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/1351568.htm)

国家の研究機関としての面子にかけて、大々的にSTAP細胞の快挙をアッピールしたかと思ったら、とんでもない研究不正騒ぎとなり、急遽、突貫工事で体裁を整えざるを得ない深刻さがうかがわれる。

小保方氏は知らないうちに理研スーパー法人化の荒波に呑み込まれていたのである。 

大観すると(極めて大雑把という方が適当かも知れないが)、国家的な研究開発体制整備上のプロセスにおいて発生した重大な研究不正課題だったSTAP問題を軸に強い政治力で始末をつけ、形振り構わず体裁を整備していったと言えよう。

即ち、解決策は相当強引なもので、最も単純化された個人(小保方晴子氏)の仕組んだかのような、ES細胞によるSTAP細胞捏造という研究不正事件として決着させた。 

こうして、理研はスーパー法人の地位を獲得の責務を担い、小保方氏の論文指導者となったが、結果として理研の面子を潰し、世界的科学者の面目を失った笹井氏は精神的に追い込まれて自殺し、小保方氏は研究不正を首謀した張本人として断罪され、前代未聞の早稲田大学の理不尽な博士号剥奪までもされ、研究生命を奪われてしまった。

一方で、理研の大勢を上手く利用し、全ての研究不正の原因が小保方氏あるように仕組んだ若山氏だけは、皮肉にも誠に調子よく山梨大教授として活動中である。 

 

2. 組織の中の個人  

組織と個人の問題は、先ごろの電通社員の自殺事件等枚挙にいとまがない。法人組織は人間性の無い非情な魔物であると私は理解している。所詮、法人の組織活動における「人」は「物」や「金」と並列な経営資源の取捨選択される要素に過ぎない。

正にStap事件は理研という法人組織の御都合主義的に小保方氏という人材を抜擢し、研究ユニットリーダーに採用した。もともと彼女のポスドク時代、バカンティ研から理研に出張している客員研究員時代に、すでに初期的な多能性を持つスフェア細胞塊を発見していた小保方氏の研究を支援する傍らで若山氏はちゃっかりSTAP幹細胞を樹立した(かに思わせる研究活動を行った)。

その優れた万能性と実用性に目を付けた理研はスーパー法人化という権益拡大の目的に、あたかも理研の実力を示す研究成果として利用しようと企んだ。

恐らく、スーパー法人化権利を確保するために理研上層部のスケジュールに合わせた形で、STAP論文発表と特許出願の日程は組まれていたであろう。

そして笹井氏を参画させ、突貫工事で見事に目標を達成に至る。

しかしそのnature論文に疑義が発生すると、今度は小保方氏一人の研究業務上の不正問題に単純化し、刑事事件として拡大、長期化させずに終息させた。

トップダウン的に組織が一つの方向で動き出すと、その動きは組織内の違和感はあったとしても封じ込める力を持っている。

そこに科学コミュニティーやマスメディアのバックアップが加わると、最早個人では抗うことができない強大なパワーとなる。小保方氏は「戦うことができなかった」のである。

 

理研のこうした対応を皮肉った「【STAP細胞飯島勲内閣官房参与小保方晴子博士を擁護「調査委員会は現代の魔女狩り」というYouYube動画があった。

https://www.youtube.com/watch?v=0vc0LJl3bvM

花田紀凱氏が【花田紀凱の週刊誌ウォッチング】で「全く同感だ」と紹介していた。

「『文春』、飯島勲さんが「激辛インテリジェンス」でこう言っている。

「オレが理研の理事長だったら、いったん小保方論文にコミットした以上、(中略)組織を挙げてSTAP細胞の証明に邁進(まいしん)させるね。それを彼女だけ排除して一人の不正だ、懲戒処分だなんて冗談じゃない」

飯島氏はさすがだ。

Stap事件 ― 若山氏率先したSTAP論文撤回の謎について ④

=== 若山氏の「特殊な手技」はES細胞利用? ===

 

若山氏は、小保方氏のOct4スフェア細胞にES細胞並みの増殖性を付加しさえすれば、iPSにも勝る全く新しいメカニズムで万能細胞を作る構想を強く小保方氏に示したのは、その実現性が高いと判断したからだろうと思われる。

小保方氏は、若山氏にキメラマウスの作製協力を求める以前に、すでに組織工学技術を使ってはいるがテラトーマまでの多能性評価を終えていた。

キメラマウスの実現さえ可能になるなら、細胞増殖能力を付加するだけで実用性ある画期的な万能細胞を実現できることを想定し、その技術的課題は彼の得意とする研究分野の範疇であったことは確かだろう。

 

研究者としての当然ともいえる探求心は大きくは2通りあるだろうと思うのである。

1つは小保方氏のように細胞変化の不思議な現象の解明という自然現象に力点を置く基礎研究指向であり、もう1つは若山氏のように細胞の得意な現象を応用し実用化することに力点を置く実用化技術研究指向である。

当然ながら、基礎研究の上に応用性の高い実用化技術が研究開発されていくものである。

近年、このような研究の流れは、研究成果のニーズが強い再生医療分野などでは研究開発競争は基礎研究の深まりを待たずに、熾烈な知的財産権競争を制するために早期から特許戦略を重視して研究活動が行われている実態が懸念されているのではないかと思われる。

 

既に、拙ブログの「若山氏が率先したSTAP論文撤回の謎について ①」において、

「若山研において小保方氏が無給の客員研究員時代に行われた研究で、なかなか小保方氏の論文は採用されない中で、唯一特許戦略で幹細胞株化の権利だけは若山氏が確保したかったのだろうと思う」

と述べたが、若山氏が画期的な万能細胞実用化についての特許戦略を立てて権利化をしていく施策というのは、研究者としても部門の責任者としても必須の仕事であるものと想到される。

そして、特許戦略とは他者に追い抜かれないように如何に広く請求範囲を権利化するかが手腕を問われる。

また、学術論文との整合性を図る必要があり、特許はその非公知の新規性を担保するために先行して出願しなければならない。

 

tea*r*akt2氏は独自のブログの「若山氏が単独でとろうとした特許出願に関する自己点検委報告の記述」の中で大変に興味深い見解を述べている。( http://blogs.yahoo.co.jp/teabreakt2/17104909.html )

まず、 小保方氏の手記に、若山氏が、STAP幹細胞に関する特許出願を単独で行おうとし、51%の持ち分を主張し、米国側と不穏が状況となった経緯を理解するために、自己点検委報告書抜粋(モニタリング委報告書附属資料 http://www3.riken.jp/stap/j/c13document14.pdf ) を紹介した上で、

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「ということは、2012年4月24日に、米国で仮出願され、翌2013年4月24日に出願された特許の中に、その本出願段階で、STAP幹細胞 関連のものも包含されたというになります。

 若山氏が、独自の特許出願を急ぎ始めたのは、2012年8月以降だと手記にありますから、時期的にも合致します。

 この国際出願の持ち分がどうだったか、すぐに出てきませんが、若山氏とすれば不本意だったのでしょう。

上記報告書では、知財担当者間での交渉の結果となっていますが、小保方氏の手記では、小保方氏自身が、特許の持ち分やオーサリングの件をめぐって、日米の著者の板挟みで苦しんだとありますので、相当の軋轢があったのでしょう。

 若山氏は、理研にいたときは、Oct4陽性を示すSTAP細胞が普通にできていて、研究室のメンバーも、それと元にして幹細胞株の研究を各種進め、関連論文も出し(学生に出させ)、特許出願の中で、特許の範囲をできる限り広くとろうと腐心していた。

 山梨大に移った以降も、STAP細胞はできるし、元留学生も中国でできているが、幹細胞株化がうまくできない。小保方氏から送ってもらった培地で培養すると、Oct4をよく発現するが、肝心の幹細胞株化がうまくいかない。

 ・・・結局そのまま、論文はアクセプトされ、大々的に発表したものの、自分の担当のSTAP幹細胞、FI幹細胞のところがうまくいかないままだ。・・・不安はどんどん募ってくる。

 ・・・という状況の中で、論文への疑義が噴出したので、これをきっかけに、全部撤回させる方向に舵を切った(しかも、STAP細胞自体が捏造だという方向で)・・・というのが、全体の流れをみて自然に浮かんでくるシナリオだと感じます。

 あの、共著者の誰にも相談しない撤回呼び掛けの唐突さ、絶対に撤回に持って行くとの強力な意志とお膳立ても、上記のシナリオを裏付けるのでは、と思います。」

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と若山氏の心境をtea*r*akt2氏は推察している。

そして、こうした若山氏の特許戦略データ作り(研究実現ターゲット)と、そのシナリオ破綻への流れにおける若山氏の心境と行動の変化が小保方氏の手記に、端的に述べられた重要な指摘が要約されているので、そのまま引用する。

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 小保方氏の手記には、

○若山氏は2012年8月以降、特許申請を急ぎ、理研特許室への若山氏のメールには、「若山研のラボメンバーは、スフィアの作製も細胞株化もまあまあできる」「いつでも再現できる」「iPS細胞よりすごいものを作った」などと記されていた。(P102~103)

2013年6月頃、山梨大の若山氏から、培地を送った後の連絡では、Oct4をとてもよく発現するSTAP細胞はできるが、まだ幹細胞株化には至っていないこと、中国人留学生の元研究員も中国で、STAP細胞の実験がうまくいっているとの連絡がきているとのことだった(P122~123)

○若山研の学生は、スフィア幹細胞株関係の論文を、若山氏と相談の上、ネイチャーの姉妹誌に投稿したが、騒動になった後、静かに取り下げたとのこと(P96、P211)。

とあります。云々

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このように、2012年8月以降の理研特許室への幹細胞株樹立の話と、約1年後の2013年6月頃の幹細胞株化に至っていない話には歴然とした矛盾がある。

その矛盾は特許戦略と実際の研究実績のギャップがあったと考えれば、特許出願経験者のベテランならば何回かそのような自分で自分の首を絞めるような、この若山氏の心境を想像できるかもしれない。

 

特許戦略上、特許の請求範囲においては、STAP細胞がいくらその発生メカニズムが画期的であってもすぐに死んでしまう細胞では実用性に乏しい。

しかし、無限に増殖する実用性の高い幹細胞株及びその幹細胞株化を達成する作り方こそが産業的価値として甚大なものになる。

若山氏は、幹細胞株化の特許権こそが莫大な価値であるがゆえに、必ず達成すべき研究課題であり、目標値としての「仮置きのデータ」作りをしていた可能性がある。

それが、2012年8月頃の若山氏と理研特許室とのメールから感じられることである。

「仮置きのデータ」とは、若山氏が「特殊な手技」で作ったキメラマウス、STAP細胞株、FI幹細胞株そして光る胎盤なのではないだろうか。

若山氏としては、先走った特許戦略と実体の穴埋めは急務となっていたに違いない。

しかし、幹細胞株化を真面に樹立する見通しが得られない窮地に追い詰められることになった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして、STAP論文に疑義が発生すると、免疫学者中心に錚々たる学者達からTCR再構成の無いSTAP幹細胞はSTAP細胞から作られていない疑念をもたれていることに若山氏は強い恐怖を感じたに違いない。

正にあの「特殊な手技」とは自らが密かにES細胞を用いた手技だったからではなかっただろうか。

 

(但し、以上のお話は、小保方氏のパートが正常なものだったと確定していることを前提に考えた一つの仮説にすぎない)

Stap事件 ― 若山氏率先したSTAP論文撤回の謎について ③

=== 若山氏の「特殊な手技」とは何だったろうか? ===

tea*r*akt2氏が自身の2014年8月のブログで 掲載し論評した記事がある。

この記事での5人(池田清彦、丸山篤史、榎木英介、竹内薫、緑慎也の各氏)の対談は、当時としてはその科学的なSTAP論文批評は読者にとって尤もらしく語られ、小保方氏の捏造を想起させるものとなっていることが分かる。

しかし、現在の我々の知識からすれば、対談における議論の対象は「若山氏のパート」のSTAP幹細胞の実体が真かどうかということで、興味ある話題として読むことができる。

先ず、1 TCR再構成がなかったことについて」と題して、STAP幹細胞がTCR再構成のあったSTAP細胞由来のものではない事を述べあっている

そして、「2 ES細胞、TS細胞混合可能性について」と題して、STAP幹細胞の実体を述べあって、小保方氏が都合良く捏造していると決めつけている。

小保方さんと表現されているところを若山さんに置き換える方が、今は対談として適切ではないかと私は思うのである。

その部分を若山さん置換して、語られた文章を記載してみよう。

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2 ES細胞、TS細胞混合可能性について 

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竹内 幹細胞になったのはES細胞で、胎盤になったのはTS細胞だった・・・・・

丸山 個人的には、実験に応じて、データを作るための細胞を替えていたのではないか思っています。ひとつの細胞がすべての実験を説明するのではなく、欲しいデータを作るための細胞をその都度あてがっていたと考えたほうがいいのかな、と。そうなると、若山さんは故意ですよね

竹内 STAP細胞を作る全工程を確認しているのは若山さんしかいない。ということは手品と同じですね。後ろから見たらタネがバレしてしまうかもしれないが、舞台の正面からだけならバレない。

 今のところ、ES細胞、ES細胞とTS細胞の混ざり物、マウスの脾臓から摘出したそのままの細胞を使い分けたという説が有力ですね。つまり、ES細胞と比べるときには脾臓の細胞を使う。そうすればES細胞とは違う細胞と言えます。万能性を示したいならES細胞、胎盤を作るならTS細胞を使ってデータを作ればいい。

(以下省略)

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 この対談の肝は、小保方氏が作った、TCR再構成が認められたSTAP細胞から誘導し、若山氏が樹立したSTAP幹細胞にTCR再構成の跡が認められないということは、

『STAP幹細胞は、STAP細胞から誘導(induction)された物ではない』

という当該分野の研究者や学者の現時点での常識のようである。

それならば、STAP幹細胞やFI幹細胞は何から作られたのかと疑問を持つことは至極当然の帰結で、従来の既存の万能細胞であるES細胞とTS細胞の力を利用することによるデータの偽装があったとしているのだ。

当時は、対談者達は、小保方氏がSTAP細胞作製からSTAP幹細胞樹立までの全てを成し遂げていたと思われていたのだろう。

元記事での竹内薫氏が発言した部分の、

「STAP細胞を作る全工程を確認しているのは小保方さんしかいない。・・・・・」

という間違った前提条件が、全く疑いも無く鵜呑みにされていた。

 

若山氏は、小保方氏に全くその「特殊な手技」を明らかにしていないことは「あの日」の陳述で明らかだが、その徹底ぶりは共同研究者としては考えられないし、指導的立場の人物としては特異性を感じざるを得ない。

ただし、幹細胞株については論文作成のための必要最小限の培養条件だけを小保方氏に伝えていたのだろう。

「あの日」第五章の中で次のように表現されている。

「若山先生の行った幹細胞樹立実験の再現をとるため、私はスフェアから若山先生がES細胞様に増殖させることに成功した特殊な培養液を用いて培養を試みていたが、たしかに若干はふえてくるものの、増えてきた細胞の形状も増殖能もES細胞とは程遠いものだった」

小保方氏であっても、幹細胞株作製の培養条件だけでは再現がとれないのは「特殊な手技」が伝えられていなかったからだろうと想定される。

当然、理研の笹井氏や丹羽氏他共著者達も知りえない事だった。

笹井氏も丹羽氏も小保方氏の細胞は確認しているが、若山氏のSTAP幹細胞は見ていなかった。

笹井氏の証言を振り返ってみよう。

  1. STAP細胞の表面に、万能性を示すマーカー(Oct4-GFP)が現れた。その過程は、10以上の視野から観察できる動画に取られていて、偽造は不可能。
  2. STAP細胞の大きさや形態は、今までに知られているどのような万能細胞とも異なる。
  3. 若山が行った実験で、キメラマウスの体内に胎盤ができた。他の万能細胞では、このような胎盤を作ることができない。

1と2は小保方氏のSTAP 細胞を自身で目で直接観察していて信憑性が高さを表現したのである。

3については当然、笹井氏は作り方の実態を見たはずもなく、若山氏の実験結果を信用したものである。

若山氏は本来なら小保方氏、笹井氏をはじめ共著者達と 議論すべきところだが、若山氏が率先して論文撤回を進めたのは、TCR再構成の矛盾から追及される危険性を察知して、若山氏が戦略的に使った「特殊な手技」を暴かれる前に取った苦肉の策だったに相違ない。

小保方氏が「あの日」に、不思議に思ったと書いた一節がある。

『論文のデータとして使用された細胞には、若山研に居た頃に若山先生からChip(クロマチン免疫沈降)は行ってもいいが、シーケンサーによる解析は行わないように指示が出されていたものがあった。Chipの実験では特定のたんぱく質が結合するDNA部位の情報しかわからないが、シーケンサーによる解析を行えば、その細胞の由来などが詳細にわかる。「なぜだろう」という疑問を持ちながらも、当時は指示にそのまま従っていた。後に次世代シーケンサーについても疑義が挙がる。この時に、次世代シーケンサーによる解析を深めていればその後の疑義は起こらなかったと思うと悔やまれる。』

これは細胞の遺伝子背景にかんする履歴を知られないように手を打っていたのではないか?

若山氏の特異的な研究の戦略性をうかがわせる。

 

 

 

Stap事件 ― 若山氏率先したSTAP論文撤回の謎について ②

                         ==== STAP幹細胞の論理破綻  ====

 

若山氏が樹立したSTAP幹細胞株の万能性の証拠以前に、STAP幹細胞は、小保方氏が作製し提供したSTAP細胞由来のものである証拠が無く、論文発表後まもなく一流の学者には捏造が疑われていた。

 

2016年「オートファジー」でノーベル医学生理学賞を受賞した大隅良典氏(東京工業大学栄誉教授)が 受賞決定直後の10月3日夜、東京工業大学で記者会見して繰り返し語ったのは、「短期的な成果に直結しない基礎科学を追究する科学的精神」の重要性だった。

それがなかなか許されなくなっている社会への憂いだった。

「分かったようで何も分かっていないことが、生命現象には特にたくさんある。えっ、なんで?ということを、とても大事にする子供たちが増えてくれたら、私は日本の将来の科学も安泰だと思う。そういうことがなかなか難しい世の中になっている。」

政府による学術研究予算の削減が続いている。

そして成果主義による予算確保の競争が厳しい。

それが、日本の基礎研究の基盤を弱くしている実態を大隅氏はあからさまに語ったと思われる。

日本を代表する大学や研究所の成果ありきの研究姿勢に一石を投じたと言えよう。

 

正にSTAP幹細胞は成果主義で結果を急いだ失敗例のように思われる。 

2014年の独立行政法人理化学研究所(通称:理研)が、政府が望む高度でスピーディな研究成果の国際的競争力強化の求めに応じ、特定国立研究開発法人(所謂スーパー法人)の指定を受けようとしていた。

正に日本の頭脳を結集した研究機関としての際立った研究事例と研究展望を示すことは当然の成り行きだったに違いない。

その代表的成果物として祭り上げられたのはSTAP細胞論文だった。

そこに述べられたSTAP幹細胞は無限に増殖する万能細胞で、iPS細胞やES細胞を超える分化能に持ち、簡単な操作によってもたらされるので、その実用性が期待されるものだった。

2014年1月28日に理研が派手な演出で大々的にその成果を公表した。

前代未聞の成果の祭典の様相だった。

世界中の科学コミュニティーからは羨望の眼差しが集中した。

この研究分野では世界的に知名度の高い笹井氏や若山氏とともに登場した無名の女性研究者の小保方晴子氏がSTAP細胞研究の主役として話題が沸騰した。

マスコミは話題豊富な好材料に恵まれ、連日STAP細胞とともに小保方氏の話題が沸騰した。 

 

その2日後の1月30日にネーチャー誌に論文が発表されると、専門家は一斉に、テレビ番組のなんでも鑑定団の審査員のように、科学的な懐疑心を一方で持ちながら、興味深く論文を読んだはずである。

この論文の肝は、刺激惹起性多能性獲得細胞( Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency cellsが所謂STAP細胞の生成メカニズムによって誕生した事である。

具体的には、

 “酸という刺激によって、分化したリンパ球の細胞が初期化してSTAP細胞となり、それを然るべき培地で培養すると無限に増殖するSTAP幹細胞になる”

ことが論文のポイントである。

 

小保方氏はOct4陽性スフェア細胞塊は、バカンティー説の体細胞の中にあるspore-like-stem cells(胞子様幹細胞)の抽出実験を重ねているうちに、セレンディピティー的に物理化学的な刺激によって惹起(induction )されてできることを発見したのだった。

特に免疫学者は、刺激による初期化への変換(induction)メカニズムの対しての科学的証拠は1点に絞られていた。

マスメディアに取り上げられ世間は騒然としていた研究不正の問題点とは異なり、科学的に本物かどうかをしっかり吟味すべきポイントは、一流の専門家たちには明確なものだった。

この時、論文にはすでに疑問を呈する不満足さを彼らは抱いていた。

 

そして、3月5日世界中で再現実験をする研究者達から再現性が得られていないとの情報に応え、理研CDBが実験プロトコル発表した。

"Essential technical tips for STAP cell conversion culture from somatic cells" Haruko Obokata, Yoshiki Sasai, Hitoshi Niwa

このプロトコールにSTAP幹細胞8株全てにTCR再構成が無いことが記載されていた。

http://www.nature.com/protocolexchange/protocols/3013

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“We have established multiple STAP stem cell lines from STAP cells derived from CD45+ haematopoietic cells. Of eight clones examined, none contained the rearranged TCR allele, suggesting the possibility of negative cell-type-dependent bias (including maturation of the cell of origin) for STAP cells to give rise to STAP stem cells in the conversion process. This may be relevant to the fact that STAP cell conversion was less efficient when non-neonatal cells were used as somatic cells of origin in the current protocol”

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TCR再構成」こそがSTAP細胞の成り立ちを証明する根幹をなすものである。

T細胞は免疫学の最も重要な免疫細胞であって様々な病原体に対して抗体を作り出す特殊な能力を持っている。

ノーベル賞受賞者利根川進博士がそのメカニズムを解明した。

T細胞は一度分化すると、受容体部分の自己の遺伝子を自在に組み替え、いらない遺伝子を切り捨てるためにDNAの長さが短くなっている。

このTCR再構成をSTAP細胞は利用し、分化した細胞が初期化したこと判別する目印にしていた。

 

ところが、STAP幹細胞にはこのTCR再構成の目印が無かったことがプロトコールに記載された。

これを見た免疫学者を中心に、その筋の科学者や研究者達は、論理破綻したSTAP現象は本物ではないと結論付けた。

つまり、STAP細胞にあったTCR再構成がSTAP肝細胞やキメラマウスには検出されなかったわけで、若山氏のSTAP幹細胞は、小保方氏のSTAP細胞由来のものではないことになる。

 

免疫学の第一人者で、オプジーボ(PD-1抗体)ノーベル賞候補と目される

静岡県公立大学法人理事長 本庶 佑氏

は「STAP 論文問題私はこう考える」(新潮社「新潮45」July 2014 p28〜p33)での見解が一流の科学者の見解を代弁していると思われる。

http://www.mbsj.jp/admins/committee/ethics/20140704/20140709_comment_honjo.pdf

その重要な指摘部分を記載する。

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質問5

結論として今回ネイチャーに発表されたSTAP 論文は捏造と考えますか。

 

答え5

この論文において、最も重要な点はSTAP 細胞の定義に係わるところだと考えます。

即ち、T 細胞受容体遺伝子の再構成のパターンがSTAP 細胞の中にきちんと見つけられ、この目印が再び分化して生じた様々な組織の中にも同一の遺伝子再構成が見つけられるかどうかという点です。

ですから、著者らは記者会見で遺伝子の再構成があったと主張しました。

 

実は、大変驚いたことに再現性に疑問が浮上した後に(3 月5 日)小保方、笹井、丹羽によるプロトコール即ちSTAP 細胞を作成するための詳細な実験手技を書いたものが、ネイチャー・プロトコール・エクスチェンジというネット誌に発表されました。

これには、STAP 細胞として最終的に取れた細胞(STAP幹細胞)にはT 細胞受容体の再構成が見られなかったと明確に書いてあります。

 

もしこの情報を論文の発表(1月30日)の段階で知っていたとすると、ネイチャー論文の書き方は極めて意図的に読者を誤解させる書き方です。

この論文の論理構成は該博な知識を駆使してSTAP 細胞が分化した細胞から変換によって生じ「すでにあった幹細胞の選択ではない」ということを強く主張しております。

しかし、その根本のデータが全く逆であるとプロトコールでは述べており、捏造の疑いが高いと思います。

 

捏造かどうかの検証として、最も急いでやらなければならないことは、やったと書いてありながらデータが示されていないSTAP 細胞から生まれた動物の細胞中のT細胞受容体遺伝子の塩基配列の分析、またすでに存在しているSTAP 細胞(STAP幹細胞)塩基配列を調べることです。

これを公表すれば、STAP 細胞という万能細胞がリンパ球から変換したのかどうかに関しては明確な回答が得られます。

その結果で意図的な捏造があったかどうか確証できます。

 

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やはり免疫学者の吉村昭彦慶大教授も早くからTCR再構成に着目し、「万能細胞STAP幹細胞について吉村昭彦慶大教授が疑問投げかける」と題して2014年3月10日のJCnet.に、

「よくよく論文を見直すとT細胞分画由来のSTAP細胞からはマウスは作製されていないように思える。CD45+分画から造られたSTAP細胞由来のキメラであれば、調べてもT細胞の存在確率から言ってその子孫でTCR再構成が見られる可能性は低いのではないか。これでは議論しようがない。」

と述べ、根拠が明らかでないので学術的な論文価値の欠如を暴露していた。

http://n-seikei.jp/2014/03/stap-1.html

このように、免疫学者の専門的指摘においては、本物であれば実用性の高い無限増殖する万能細胞として価値の高いSTAP幹細胞なのだが、その実在性に関わる根幹が極めて曖昧な論文だと評価され、論理的にほぼ破綻した論文と見なされた。

 

TCR再構成の無いことに対して、

笹井氏は「①STAP細胞のなかにT細胞が含まれている確率はもともと低い、②マウスは1週齢で再構成が起きている確立もそれほど高くない、③STAP細胞からSTAP幹細胞になるのはその一部である。従って、STAP幹細胞にTCR再構成が見られなかったとしても、確率論からすると不思議ではない。」と述べた。

 

丹羽氏は、STAP細胞の塊の時点では、TCR再構成が確認されたことを述べた上で、幹細胞で確認できなかった理由について「(T細胞の数が少なく)TCR再構成を持つSTAP幹細胞が得られる確率は低い」と指摘。STAP細胞由来のキメラ胚においては、T細胞が、STAP細胞由来か、宿主由来か判定するのが難しい点も述べた上で、「4倍体のキメラでは、『微弱なもの(TCR再構成)が出た』というデータはあった」と述べていた。

 

しかし、こうした説明は実証データではなく、単なる言い訳にしかならなかったに違いない。

 

但しもしもTCR再構成の無い事実に反して、論文に載せたキメラマウス、STAP幹細胞、FI幹細胞を実際に確実に作ったと、若山氏がその成り立ちの正当性を堂々と説明し、自信を示しておれば、全く新規な現象の科学的な疑問点として、それなりの決着の仕方はあったかもしれない。

 

しかし、若山氏はこうした科学コミュニティーの厳しい見方に、恐怖を覚えて、撤退を急いだ。

 

若山氏は43株ものSTAP幹細胞を樹立していながら、その作製の正当性を誰にもあからさまに示すことができなかったのは、免疫学者が「これは論文のabstractの”induction”説を否定して結局cell-type-dependent=selection説を肯定するものではないか」と考察したように、論文から逸脱した「特殊な手技」が施され、脚色されていたからではないだろうか。

小保方氏の「あの日」に、最初に若山氏がキメラマウスに成功し、その残りの細胞をES細胞樹立用の培養液で培養してSTAP幹細胞を樹立した時の場面で、

「特殊な手技を使って作成しているから、僕がいなければなかなか再現がとれないよ。世界はなかなか追いついてこられないはず」

と語ったと書かれている。

そして、キメラマウスやSTAP幹細胞の作製については、 小保方氏にはその技を決して指導し教えることなく、若山氏が勝手にその後も進めて行ったことが記されている。

 

小保方氏が述べているように、ネーチャーのリバイスを経て、「現象の発見」がテーマでなく「新たな幹細胞株の確立」をテーマに様変わりしたアーティクル論文に仕上がったことが、若山氏の正にブラックボックス研究成果であり、「STAP細胞の作製の成功・存在の証明」は常に若山先生の説明責任を要する論文内容だったといえるのだ。

 

ところが、そのブラックボックスの実態は決して明らかにできない偽装があって、若山氏は、小保方氏を目隠しにしていた、若山氏にしかわかり得ないマウス系統や胚操作技術などのノウハウを巧妙に活用したものだったのではなかろうか。

それが若山氏の正に特殊な手技ではなかったか。

それ故に、論文が問題視されて、幹細胞の作り方に焦点が集まることは絶対に避けなければならなかった。

そこに衆目が向かないように若山氏は、小保方氏がES細胞を使用したように偽装したのだ。

 

 (但し、以上のお話は、小保方氏のパートが正常なものだったと確定していることを前提に考えた一つの仮説にすぎない)

 

(参考資料) 

http://juku.netj.or.jp/note/summer2014/080604_honjyo/

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NPO法人ネットジャーナリスト協会主催

科学オリンピックを目指す!創造性の育成塾2014 第9回夏合宿

 2014年8月6日 (水)4時限目 「STAP細胞はなぜ迷走したのか」

本庶 佑 先生

  静岡県公立大学法人 理事長 (文化勲章) 

(ビデオが収録されています)

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Stap事件 ― 若山氏が率先したSTAP論文撤回の謎について ①

若山氏が、2014年3月10日に、わざわざ記者会見してSTAP論文撤回を呼びかけたのは、本当に小保方氏のテラトーマ画像のミスにあったのだろうか?

そのミスは若山氏にとって格好のチャンスだったことを説明しよう。

但し、少々話は長くなる。

f:id:ryobu-0123:20161130140206j:plain                                                                             

2014年7月、nature 誌に掲載したSTAP論文の取下げ理由が下記nature文書に掲載されている。

そして、7月23日に、取下げの理由が改定されたことが示されている。

http://www.nature.com/nature/journal/v511/n7507/full/nature13598.html#supplementary-information

Nature | Retraction

Retraction: Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency

分かりやすく原文を和訳しておこう。

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いくつかの重大なエラーが私たちアーティクル及びレターで発見されていて(http://dx.doi.org/10.1038/nature12969)、理研は綿密な調査行った。理研の調査委員会は、いくつかの過誤を不正行為(補足データ1と補足データ2を参照)として分類しています。

理研の報告書で考察されていない、著者達によって識別された追加の過誤は以下に示す通りです。

    1. レターのFig.1aおよびbは凡例に示されるなES細胞によるキメラ胚とSTAP細胞によるキメラ胚の比較になっておらず、共にSTAP細胞由来のキメラ胚である。
    2. ア-ティクルの拡張データFig.7dとレターの拡張データのFig.1aは同じ胚の異なる画像であって盆例に示すような2倍体キメラ胚と4倍体キメラ胚ではない。
    3. レターのFig.1aの説明に間違いがあります。Fig.1aの右のパネルは、カメラレベルで「長時間露光」画像ではなく、デジタル的に強化されたものです。
    4. レターのFig.4bにおいて、STAP細胞とES細胞が間違って、あべこべに表記されている。
    5. アーティクルにおいて、STAP幹細胞(STAP-SCs)の一つのグループは、129/SVsとB6それぞれ背景に18番染色体に同一のCAG-GFPが挿入担持され、若山研で維持管理されていたマウス系統を交配して得られたF1雑種の脾臓から誘導されたSTAP細胞由来であるかのように報告されました。しかながら、8株の STAP幹細胞系統のさらなる分析によって、それらは、同じ129×B6 F1遺伝的背景を共有してはいるものの、GFP挿入部位が異なっていることが判明。さらに、STAP細胞の誘導のために使用したマウスは、GFP導入遺伝子についてホモ接合性であるが、STAP幹細胞はヘテロ接合である。GFP導入遺伝子の挿入部位が、若山研にて保持されているマウスやES細胞のそれと符合する。左様に、ドナーマウスと報告されたSTAP幹細胞間には、遺伝的背景と導入遺伝子挿入部位において不可解な差異が存在する

 

私たちは、アーティクルとレターに過誤があったことをを謝罪する。これらの複数の過誤が全体として、研究の信頼性を損ない、STAP幹細胞現象が本物かどうかの疑念が生じた。進行中の研究は新たにこの現象を調査しているが、現在、多岐にわたり検出された過誤の性質を考慮すると、両方の論文を撤回することが適切と考える。

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此処に述べられた論文取下げ根拠の5項目のうち、1,3及び4はレター論文の図に関わる齟齬が示されている。

2はアーティクルとレターでのキメラ胚に関わる図の齟齬である。

これらの図の問題は、キメラマウス以降の若山パートの問題で、小保方氏が写真をデータを採ったものとは考えにくいものであるし、若山氏が特に注意深く査読を要するところで、彼が正規データを以て是正し、説明責任のある過誤だろう。

さて最も肝心な撤回理由が5である。

2014年6月16日に、若山氏が維持管理していたマウス系統とは異なる外部のマウス遺伝子がSTAP幹細胞から検出されたとして、小保方氏に渡したマウスでないとの報告をし、あたかも小保方氏が外部からポケットに入れて持ち込んだとの邪推を、わざわざ記者会見で発表した。

ところが、2014年7月22日に、上記記者会見での発表は過ちで、若山研に維持管理されていたマウスであることが判明し理研のホームページに発表されたのだった。理研の示した見解部分を以下に示す

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1.若山氏が提供したGFPにより光るマウスから、小保方氏がSTAP細胞を作製し、それを若山氏が受け取ってSTAP幹細胞株を樹立したとされる。保管されていたSTAP幹細胞株の解析から、前回の報告で、その由来が不明とされていたFLS STAP幹細胞株について、CAG-GFP遺伝子及びAcr-GFP遺伝子が並列に染色体に挿入されていることが判明した。

2.CAG-GFP 遺伝子とAcr-GFP 遺伝子が共挿入されたマウスは大阪大学岡部研究室で樹立され、その系統はCDB の若山研究室に分譲され維持されていたが、FLS 細胞株(STAP幹細胞)と当該Acr-GFP/CAG-GFP マウス(岡部研由来マウス)が、同じ染色体部位にGFP 遺伝子の挿入を持つかどうかは現在調査中であり、明確な結果が得られ次第報告する。

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理研の上記の見解が示された翌日の7月23日、理由5に上記理研の見解よりも踏み込んだ理由表記がなされた。

即ち、若山研に維持管理されたマウスだが、ES細胞と同等の遺伝子背景をもつことを述べ、STAP細胞ES細胞で偽装したことを強く示唆する表現にしている。

勿論、この訂正は若山氏がこっそりとnature 誌に提出したものだ。

撤回理由5は、共著者が同意した当初の「STAP幹細胞は若山研のマウス系統でなかった」理由を、共著者に同意を得ずに、勝手に若山氏が書き換えたものであった。

 

この論文撤回の経緯は小保方氏の「あの日」第十一章「論文撤回」に詳しく、小保方氏の立場で詳述されている。

この論文撤回騒動は、共著者の1人の若山氏が1人舞台で、マスコミ相手に、いかにも公明正大に、自身が樹立したSTAP幹細胞の分析を論文発表後に実施し、使用したマウス系統と異なる遺伝的背景が異なることを公表して、STAP幹細胞のキメラや胎盤形成などの現象はES細胞の現象だったと世論を誘導しながら論文撤回を画策したものだった。今となっては明らかな偽装事件だったと思われる。

「あの日」第十一章の中に『その後、バカンティー先生とネイチャー編集部との話し合いの結果、「STAP幹細胞のマウス系統のデータに関しては研究室の責任者であった若山先生しか情報を持ちえない。その人が、データが間違っているとネーチャーに連絡を入れている。STAP肝細胞のデータがアーティクルに入ってしまっている以上、仕方がない。(以下略)」と連絡が入った。』とある。これこそが共著者がレターと共にアーティクルも撤回に同意した背景だった。

 

この論文撤回騒動の根底にあることは、『STAP幹細胞』の『実験プロセス』上の最も基本的な『遺伝子情報の齟齬』である。

若山氏は2011年11月~2013年2月の1年3カ月の間にSTAP幹細胞株を43株も樹立しているのだ。

この間、STAP幹細胞の遺伝子情報を全く解析しなかったというのは驚きである。

何故、幹細胞の遺伝子解析をnature論文後に行ったのか?

世界の若山博士ともあろう人が随分と大雑把な研究をしたものだなと思うのである。

考えてみれば特許戦略面からであれば、作製方法とパーフォーマンスの新規性を明確に訴求し陳述すればよい。

このことは新技術の特許戦略を優先した結果ではなかったかと思う節がある。

若山氏の頭の中では、STAP 幹細胞株化は特許が重要で、兎に角、仮置きのSTAP幹細胞現象を表現して、本格的な実用化の手段は後回しにしていたのではないだろうか?

「あの日」には小保方氏のスフェア細胞塊の現象論的な研究とは別に、若山氏はキメラマウスを作るだけでなく、iPS細胞に対抗する実用性の高い幹細胞株樹立を独自に進め、特許対策に積極的だったことが示されていることがそれだ。

産業的に甚大な効果をもたらす先行技術との比較優位性を、審査官にアピールするために、データに下駄を履かせたり、見やすいデータに加工したりするばかりでなく、最大限に権利化したいレベルまで拡張したデータを明細書に盛り込むのは特許の常套手段となっていることは暗黙の事実である。

「あの日」に書かれている若山氏のデータ仮置きは、特許請求の範囲をカバーするために必要なデータ作成の戦略的手法ではなかっただろうかと思う。

即ち、キメラマウスの作製やSTAP幹細胞とFI幹細胞の樹立、そして光る胎盤のデータの取得のために若山氏は特殊な手段を用いていたのではないだろうか?

これはどういうことかを想像してみよう。

まず、以下に示すのは若山氏の成果を要約したものである。

☆ 若山氏が選定したマウス(小保方氏には129系統マウスとB6系統マウスの雑種F1の生後一週間の赤ちゃんマウスでOct4-GFPマウスと伝えただけ)の脾臓から得たリンパ球をFACSにより分画したCD45陽性細胞から小保方氏が作製したOct4陽性(GFP発現)スフェア細胞塊(=STAP細胞)を切り刻んで胚盤胞に移植して若山氏はキメラマウスを作り、緑に光る胎盤作製に成功した。

☆☆ 更に、キメラマウス作製後に残ったSTAP細胞でSTAP幹細胞株を樹立した。

☆☆☆ そして、胎児にも胎盤にもなるFI幹細胞を樹立した。

このように若山氏が、小保方氏の増殖能の無いSTAP細胞を無限増殖可能なSTAP幹細胞株及び胎盤にもなるFI幹細胞株を実現したことは、その実用性上で医療または畜産等に甚大なる産業的価値をもたらす基盤が確立したことになったのである。

 

しかし、当時はバカンティー研のポスドクの小保方氏のオリジナリティーを無視できない若山氏にとって、小保方氏を若山研に取り込めれば、若山氏の操縦ができたが、皮肉にも理研が小保方氏を迎い入れる事態になった。

というのも、STAP細胞からSTAP幹細胞の全てに小保方氏が主体であるとの誤解があって、若山氏は小保方氏を指導し援助しただけの役割と思われていたからだろう。

 

若山研において小保方氏が無給の客員研究員時代に行われた研究で、なかなか小保方氏の論文は採用されない中で、唯一特許戦略で幹細胞株化の権利だけは若山氏が確保したかったのだろうと思う。

しかし、小保方氏を理研が確保するとともに、笹井氏が論文を見事に仕上げてしまった。

このとき、このまさかの出来事に、若山氏はどれほどの不安を覚えていたことだろう。

論文はことごとく失敗していたにもかかわらず、さすがに笹井氏はあっという間に仕上げてしまった。

特許対策のために、かなり勇み足のデータ作りや、特殊な手法でキメラや幹細胞株をでっちあげたことが耐え難い後悔になったのではなかっただろうか? 

まともにこれらの事象を再現させる方法を考えながら、苦悶の毎日を過ごしていた事だろう。

 

若山氏は小保方氏のSTAP細胞再現性のあることは知っている。

しかし、若山氏のキメラマウス、STAP幹細胞、FI幹細胞そして光る胎盤STAP細胞との関連付けが無いものだということは彼自身が一番良く判っていることだ。

 

STAP論文がnature誌に載ることは本来喜ばしいことだが、若山氏には苦痛だったに違いない。

2014年3月10日に、論文画像不正(テラトーマ博論写真)が見つかったときに、論文撤回の記者会見こそ若山氏にとって絶好のSTAP細胞からの撤退作戦のチャンス到来だったのではないだろうか。

その時に、STAP幹細胞の遺伝子解析を手配したのは何故かと言えば、STAP細胞を小保方氏に作らせたマウスと異なる遺伝子を持つことは若山氏には当に分かっていたはずなのだが、客観的な解析による新たな事実を示す演出によって、小保方氏の側に不正があったかのごとくに注目を仕向けさせ、自身はこの不正に無関係を装うためだったのだろう。

 

一方、小保方氏は自己のパートである、若山氏指定のマウスからOct4陽性スフェア細胞塊(=STAP細胞)を作成し提供する作業で若山氏の研究を支援していただけである。

若山氏の独断的な論文撤回会見の意図や、キメラマウスや幹細胞株化には関れなかったために、マウスの遺伝子と幹細胞等の遺伝子の齟齬の発表を知ることは小保方氏にとっては寝耳に水のことだったのである。

 

(但し、以上のお話は、小保方氏のパートが正常なものだったと確定していることを前提に考えた一つの仮説にすぎない)

 

次回は、若山氏が恐怖を覚えて論文撤回を決意した背景を考えてみようと思う。

 

(注)2017.1.24 分かりにくい表現を修正しました