Stap事件 ― STAP細胞をめぐる最近の話題、そして気になる事

2年前に理研がSTAP研究をあっさりと撤退したのとは裏腹に、日本社会にはその撤退理由に釈然としない人々が大勢いる。

 
Natureに掲載された2件のStap細胞論文を撤回させ、知的財産権の特許戦略からも撤退し、当該研究者と研究体制を処分して、完全にSTAP研究から撤退した。
そして、再生医療分野の要の要素技術を完全にiPS細胞に委ねる研究開発と実用化の戦略を強力に官民挙げて推進しているかと思われる。
 
そんな中、小保方氏の「あの日」の出版がベストセラーになったし、佐藤貴彦氏や渋谷一郎氏のSTAP細胞決着の疑問点に迫る解説書が出版され、また、婦人公論で小保方氏と瀬戸内寂聴氏の対談が注目を集めた。
 
また、海外では、米ハーバード大学附属ブリガムアンドウィメンズホスピタルが、4月にSTAP関連特許の審査請求した事が話題となり、最近では韓国が超音波やレーザー等物理的刺激で細胞を多能化させる特許出願が報じらている。
 
更に、米テキサス大学医学部ヒューストン校のキンガ・ヴォイニッツ博士のiMuSCs『損傷誘導性の筋肉由来幹様細胞』論文、ドイツの名門大学、ハイデルベルク大学の研究グループ『JurkatT細胞の運命が多能性と細胞死の間で二極分化する』論文、そして、ワシントン大学の小保方氏STAP論文を引用したと話題になった癌細胞研究論文の発表が5月頃にあった。
 
尚、元理研職員の石川智久氏が若山研ES細胞窃盗告訴した事件は神戸地検「窃盗の発生自体が疑わしい」として棄却した。
そして、2014年7月放送の偏向的だったNHKスペシャル STAP細胞 不正の深層』のBPO審理の行方が待たれている。
 
ところが、日本の科学コミュニティやマスコミの反応が鈍いため、湯之上隆氏や上田岳弘氏 のような苛立ちを告白する著名人もいる。
 
2014年1月28日のあの輝かしい理研のSTAP成果の発表と、その後の驚きの結末のギャップを心の中で整理できない人々にとって、今年のSTAP細胞関係の話題は関心の的とならざるを得ないし、関心が更に深まっていくだろう。
 
 
筆者が、最近、特に科学的側面の問題として思うことが2つある。
1つは、笹井芳樹氏の残した核心的な言葉である。2つ目は、桂調査委員会の結論の科学的説得力の問題である。
 
① 笹井氏はSTAP論文の不正問題を重視し、「論文の信頼性が損なわれた」として論文撤回に賛同する。
2014年4月16日、笹井氏は記者会見の中で、「STAP現象が存在しないとすれば共著者には加わっていない。ES細胞の混入については真っ先に考えることで何度も確認をしており、ES細胞の混入では説明できないものが非常に多い。今、反証仮説でなるほどと思うものは見当たらない」STAP細胞としてぼくらが呼んでいるものは、いままで知られている細胞でないことは確か」と発言した。そして、「STAPは仮説だが、合理性の高い仮説である」とも言った。
 
笹井氏はSTAP細胞、すなわち「刺激惹起性多能性獲得(stimulus triggered acquisition of pluripotency)」した細胞の命名者である。
STAP細胞のこうした「外的な刺激の作用で多能性を獲得する」という常識を超えた現象を「STAP現象」と呼ぶような、強い確信を、その道の第一人者が持っていたことは決して忘れてはならない。
細胞学者や細胞研究者の今後の研究によって、STAP細胞の再現がより詳細なメカニズムの下にしだいに明らかになることを期待できるような雰囲気になりつつあるかもしれない。
 
② 理研は、桂調査委員会の結論を以て、決着をつけたとしている。
しかしながら、STAP細胞ES細胞由来のものと断定したが、ES細胞混入の原因は偶然ではなく人為的なものだろうとの推定だけだった。
小保方氏のSTAP細胞から43株のSTAP幹細胞を若山氏は樹立しているが、そのすべてがES細胞由来のものだった 驚きの結論である。
高度な解析技術を駆使して得たのは、ES細胞混入という、当該研究者が犯すべくもない最もお粗末な結論になった。しかもその混入原因が、人為的な行為として疑いをかけておきながら、「本調査委員会の能力と権限の限界でもある」としてそれ以上の調査は無かった。
 
この人為的な嫌疑は当然に小保方氏に向けられたものだったのは、報告書のまとめの中に「たまたま小保方氏と・・・・・・もし、自分が共同研究をしていたらどうなったか・・・・・」と述べていることから明らかである。
若山氏が担当して樹立した43株ものSTAP幹細胞株の全てにおいて、どのタイミングで、ES細胞混入を如何に巧妙に、ES細胞に詳しい若山氏や研究員に気づかれないように、小保方氏が全てのSTAP幹細胞株に対して、ES細胞混入を実行できたかという仮説を示し、実証すべき事である
 
ただし、桂調査報告書のES細胞混入とした結果が、全て疑う余地のない結果という保証が無ければならない。
 
科学コミュニティの外ではあるが、ブロガー和モガ氏が、桂調査報告書を基に、データの詳細を吟味解釈している。
そして、必ずしも桂調査委員会のES細胞混入の筋書きは成立しない矛盾点から、「ES細胞混入偽装説」が成立するとしている。
 
 
桂調査報告書はバイブルのごとく信じている人も多い。
本来、この結論の真偽について、本来科学コミュニティの詳細な議論が交わされてしかるべきことではないだろうか。
特に、最も注目される若山照彦山梨大学教授は、現役の研究者であり、教育者でもあるが、現在は3猿のごとく沈黙を守っている。
しかし、若山氏のSTAP幹細胞研究の具体的な活動記録や様々な疑問点に答える義務は、多額の税金で給料をもらっている国立大学の教授としてその責務を依然持っているはずである。
日本の科学コミュニティーが、STAP事件の、極めて具体性に欠けるこの43回に渡って成し遂げたとする科学的な捏造のプロセスを示さないならば、この事件はストーリー性のあるまともな映画にするのも極めて困難であり、お粗末な茶番劇だ。
 
こうした曖昧な結論は様々な憶測を呼び、ネット上で不毛の議論を延々と続けている人達が大勢いる。
小保方氏への過激なバッシングを、無神経に続けているブロガーやコメンテーター達の粘着質な人間性には驚く。
組織権力やマスメディアからの過剰な個人攻撃を受けて、不本意に研究生活から離脱している小保方氏の人権や主張を応援する人々のブログやコメントはあっても人間性に疑問の余地はないが、犯罪者でもないのに、全く利害関係の無い人までが、無責任な匿名でとことんいじめ倒そうとする熱心さは、その人間性の欠如と恥辱神の無さに驚くばかりである。
 
本ブログの「Stap事件 ― ちょっと気になる gg2氏の話 」で引用したブログを時々眺めているが、『 「結論ありき」の非専門家ブログが社会を混乱させている:世界三大不正STAP事件の正しい理解を社会に広める会 』という語るに落ちる、日本人として恥知らずなブログである。http://blog.livedoor.jp/peter_cetera/archives/2016-07-22.html
看護関係専門学校か、大学の教員らしき「管理人の1人」を中心に「軒下管理人」「末席管理人」となのる3人の共同ブログで、桂調査報告書をバイブルにした、カルト集団的な教祖様と言う方がふさわしく、科学的な正しい理解を説くまともな教育者とは程遠い偏向的ブログだ。
このブログのコメンテーター達はその信者であって「小保方氏擁護派」の牽制し「若山先生擁護派」の構図にほぼなっている。
このコメンテーターのこのブログに生活時間の多くを費やして、それが仕事となってしまった熱狂的な 信者のような人も何人かいる。
全く信じられない、非建設的な不毛の議論ををする集団発生も、Stap事件から派生した社会問題とも言えるだろう。
参考に、同ブログの2016年7月22日の「いい年をした大人がこれでは、いつまで経っても日本人と科学は水と油のような関係性のように思えてしまう」にはコメント参加者数58名、コメント総数521件があって、8月10日頃までコメントが続いた。
その上位コメンテーター件数を見ると数人が場を仕切っている。トップのアノ姐さんのコメント活動は何ともすごい。毎日、昼夜を分かたずこのブログに張り付いてコメントしている。
内容を見ると、やはり小保方氏批判、若山氏擁護のコメントに徹している。
ほかに仕事も手に付かず、不毛のコメントをし続ける生活を続けている人達がいるのには気味の悪さを覚える。
Stap事件から派生したネット社会の抱える病巣が垣間見える気がする。
 
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