Stap事件 ―  小保方氏の研究パートは有益な事実⑦              ====  小保方バートは科学的に健全である! ====

前回は、理研のSTAP現象再現検証に関する相澤論文の査読者コメントに対する相澤博士の英文を意訳して紹介した。

今回は、その内容を吟味した結果、「小保方パート」は科学的に健全であり、若山パートに科学的解明すべき課題があることを述べようと思う。

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図A  小保方パートの検証実験実態 (査読者コメントへの相澤氏の回答より)

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 図B  キメラ実験に利用した胚のステージ

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① 笹井氏の残した命題

 

2014年4月16日、笹井氏は記者会見の中で、STAP論文の不正問題を重視し、「論文の信頼性が損なわれた」として止む無く論文撤回に賛同を表明した。これは、組織マネージャーとしては致し方ない事態となったからである。

しかし、「STAPは仮説だが、合理性の高い仮説である」という命題を残したまま、8月5日笹井氏は無念の最期を遂げた。 

笹井氏は「刺激惹起性多能性獲得(stimulus triggered acquisition of pluripotency)」した細胞の命名者であるが、、STAP細胞のこうした「外的な刺激の作用で多能性を獲得する」という常識を超えた現象を「STAP現象」と呼ぶような、強い確信を、その道の第一人者が持っていたことは決して忘れてはならない。

それは「STAP現象が存在しないとすれば共著者には加わっていない。」という発言に端的に表現されている。

STAP細胞としてぼくらが呼んでいるものは、いままで知られている細胞でないことは確か」とまで述べた。

あたかも、柳生石舟斎の切った芍薬の茎の切り口のように、STAP現象に関しての凡人には解せぬ鋭い言及であったと思えるのである。

しかし、笹井氏のこの痛切な命題を授け得たのは小保方氏のみだったとしたら残念至極な事であろう。

鈍感な吉岡伝七郎のような名ばかりの専門家や薀蓄垂れの評論家やメディア記者ではなく、宮本武蔵の感性を持つ者が科学コミュニティの中に必ずいると信じたい。

 

「科学的な重要課題」が「人為的なES混入捏造」事件に変貌

 

ES細胞の混入については真っ先に考えることで何度も確認をしており、ES細胞の混入では説明できないものが非常に多い。今、反証仮説でなるほどと思うものは見当たらない。」とこれまた重要な見解を提起していた。

しかし、理研は、そのような見解を無視するかのように、「人的行為による、ES細胞混入」という当該研究者が犯すべくもない最もお粗末な低次元な結論に導き、そればかりか、そうした結論を世間に巻き散らかして、小保方氏個人を晒し首にし、STAP研究を不法投棄したかのような極めて理不尽な決着の仕方だったと思うのは私だけだろうか?

笹井氏は組織マネージャーとして招いた責任を取ったが、科学者としては全く不本意な決着だったと草葉の陰から思っているに違いない。

もう一度思い起こしてみよう。

科学技術的観点で、「STAP現象仮説」を裏付ける具体的な事柄として、

1.STAP細胞の表面に、万能性を示すマーカー(Oct4-GFP)が現れた。その過程は、10以上の視野から観察できる動画に取られていて、偽造は不可能。

2.STAP細胞の大きさや形態は、今までに知られているどのような万能細胞とも異なる。

3.若山が行った実験で、キメラマウスの体内に胎盤ができた。他の万能細胞では、このような胎盤を作ることができない。

と笹井氏は述べていた。

それにもかかわらず、研究課程の一断面なのに非科学的な「人為的ES混入捏造事件」というお騒がせ事件へと理研もメディアも誘導してしまった。そのため笹井氏のあの「科学的な重要課題」の真面目な科学的究明は置き去りになってしまった。

結果として、理研の結論は事件の決着を告げるもので、「STAP細胞は架空の物」との一般認識で終わっていた。 

しかるに、小保方氏の著作「あの日」を読んで、刷り込まれた認識が一変した人は私だけではなかったようだ。

小保方氏が学生時代に早稲田大学東京女子大そしてハーバードで培った研究活動の延長戦上の研究課題、後の「STAP細胞」研究の一連の流れが分かったし、発想の原点もバカンティ先生の「スポアライク・ステムセル」仮説からのもので、バカンティ研ひも付きで、理研CDB若山研でのポスドクとしての研究活動だったことを知るにつけ、理研が出した結論の信憑性に疑問が生じるのは当然ではないだろうか?

そして、小保方氏は実験大好きな人物で、発想したことをすぐに試してみないと気が済まない性格の人物だと判るし、工夫しては試しまた工夫しては試す現物主義の凝り性だと判る。

研究好きなこのような人物が、失敗や過失はあるにせよ、大切な自分の研究をわざわざ捏造するなどありはしない。

彼女が、「本当はES細胞なのに継続的に架空のSTAP細胞を偽装し続けた」と考えることは下種の極みである。

理研は平気でその結論を下して決着つけたところが、人間業でなく組織業の無責任さだろう。

 

③ 研究活動の破壊で置き去りにされた命題 

 

「学術研究」は一種のサービス業ではある。

本来、「学術研究」とは自然、人間、社会におけるあらゆる現象の真理や基本原理の発見を目指して、人間が自由な発想、知的好奇心・探求心をもって行う知的創造活動である。 古来、人類は「宇宙とは何か、それを問う我とは何か」を問い続けてきた。 これらはすべて人類に内発する「知る」ことへの飽くことのない欲求に由来している。(www.nins.jp/tokusetsu/gakuzyutu-nani.php参照) 

要するに、様々な課題解決活動の継続の中で、知的財産を蓄積しながら、必要に応じて社会にそれらを還元するビジネスなのだ。「劇場型」娯楽のサービス業とは全く異質なものだ。

 

ところが、理研は、あたかも「劇場型」の娯楽サービス業まがいの演出をして、ES細胞やiPS細胞と同等以上の万能細胞の研究完成品と誤解させるようなSTAP細胞成果発表をメディアを通して披露した。この時からSTAP研究はSTOPした。この研究仕掛品STAP細胞の報道によって、科学者、科学記者、評論家、異種業界の人々、一般の門外漢達が一斉にメディア情報をもとにノーベル賞間違いなしと熱狂した後、論文の欠陥が見つかるや激しい批判やバッシングやブーイングの「劇場型」のヤジ馬騒動となった。

未だ最適条件ではなく出来たり出来なかったりだが、未知の新しい多能性現象を持つ細胞を紹介しただけなのだ。

 

小保方氏が、会見からたった3日後に、伝えた「報道関係者の皆様へのお願い」メッセージ には、

STAP細胞研究はやっとスタートラインに立てたところであり、世界に発表をしたこの瞬間から世界との競争も始まりました。今こそ更なる発展を目指し研究に集中すべき時であると感じております。」

と、まだまだこのSTAP研究は不完全な様々な問題点のある仕掛品だと訴えていたのだが・・・。

未完成の仕掛品なのだから、問題点はあって当然である。

論文リテラシーも指摘は甘んじて受けるべきだし、データと結果の非整合性も指摘は大いに歓迎である。訂正できる事は訂正し、科学的問題点は課題として取り組んでいくことになるのが科学技術研究の有り方である。

通常は科学コミュニティの中で議論されていって当然の発明発見テーマだ。

生物学者 和戸川氏も述べている。http://essay-hyoron.com/index.html

『小保方の研究に疑問を呈する研究者は、笹井の見解に論理的に反論しなければならない。 その程度のこともやらない(できない)研究者には、小保方を批判する資格はない。

全く当り前なことだが、科学的な問題は、科学的な議論をできる場で、徹頭徹尾科学的・論理的に討論しなければならない。』

 

ところが、新しい物や新しい現象を発明発見してそれなりの権威からもお墨付き貰って、投稿の厳しい査読も経て発表したら、逃げ場も失うほどの取材攻め、罵詈雑言、個人情報拡散し放題、村八分、療養生活そして博士号剥奪。

笹井氏は亡くなり、若山氏は山梨大で3猿を貫く。

小保方氏の研究活動は完全に閉ざされた。

そして、「STAPは仮説だが、合理性の高い仮説である」という命題は依然残されたままになった。 

④ [STAP HOPE PAGE と相澤論文                                                                            

理研が下した結論「人為的ES混入捏造事件」によって、日本の科学コミュニティーは「STAP」という言葉をまるで禁句にしたかのようである。

その静けさの中に、小保方晴子著「あの日」を出版した。これによって達が依然として「STAP」への関心が強いことが明らかとなった。

そして、小保方氏はホームページ「STAP HOPE PAGE」を立ち上げた。 

それは小保方氏が現状でできる最善の策として、良識あるSTAPに関心を寄せる世界の科学コミュニティに対し、真面な科学的議論とSTAP研究を深め、科学的に確かな立証の協力の願いであることが、Greetings に述べられている。

“Stap事件‐小保方氏の研究パートは有益な事実③ 『STAP HOPE PAGE は本物だ!』”で詳述したように、小保方パートは健全なものである。

それは最早、小保方氏の独善でも欺瞞でもなく、事実に向き合った科学者が証明している。それがSTAP検証実験の総括責任者であった相澤慎一博士である。

理研ホームページの「STAP現象の検証結果」( http://www.riken.jp/pr/topics/2014/20141219_1/ )にはSTAP現象は何も再現できなかったことが平然と述べられている。

しかし、実際にSTAP現象の検証実験に立ち会った相澤氏が投稿した、

科学論文“Results of an attempt to reproduce the STAP phenomenon”(スタップ現象の再現性検証結果:http://f1000research.com/articles/5-1056/v1 )

において、査読者のIrene de Lazaro氏とAustin Smith氏のコメントに対する相澤氏の回答で、小保方パートは再現されており、「STAP HOPE PAGE」に小保方氏によって転記されている「理研CDBのSTAP検証実験」は公表されなかったが、真正なデータであることが良く判る。

Austin Smith氏が査読コメントに最初に表現したように、

『2つの論文は最早、複数のエラーや不正行為が認知されて却下されたが、撤回通知はその結果が再現性の無いことを述べてはいないのであって、ただ単に「STAP幹細胞現象が真実であるか否かを疑念を抱かずに言うことはできない」と述べているだけである。』

“Although the two STAP papers have now been retracted acknowledging multiple errors and misconduct, the retraction notice does not state that the results are irreproducible but only says “we are unable to say without doubt whether the STAP-SC phenomenon is real”.”

という言葉が、現状における「STAP現象」の科学的な真面な認識だと伝えているのである。

つまり、

  1. 「小保方パート」のSTAP細胞作製プロセスで、外的刺激で体細胞が初期化し多能化する現象は科学的に立証されていたという事実
  2. 「若山パート」のキメラマウスやSTAP幹細胞株化や胎盤形成などの万能性の再現の立証は無く、それが真実かどうかが疑問である事

が科学的な現状認識ということになる。

 

ただし、理研の検証実験には科学的な検証として、厳しい監視下で実施されたことは既に周知の事実だが、それ以外にも忠実な再現実験にはなっていない問題点もあったことが、相澤氏の回答内容から明らかとなった。

しかしながら、それにもかかわらず、小保方パートの確証がえられた事実は大きい。万能性活性が弱かっただけである。

 

⑤ 今後の課題 

 

1)  小保方晴子氏の研究者への復権

小保方パートに何ら捏造とは無縁でSTAP細胞は存在したと言える以上、研究者への復権を取り戻すことが第一番目の課題であるだろう。

 2)  若山パートにおける、キメラマウス実績やSTAP幹細胞株の実績は一体何であったのかの科学的検証が重要な課題となるだろう。

  

笹井氏の残した「STAPは仮説だが、合理性の高い仮説である」という命題は、今後は科学的な議論をできる場で、徹頭徹尾科学的・論理的に討論してもらいたいと心から願いたい。そのためにも小保方氏の研究者への復権を果たして、基礎研究でより確かな真理を追究しSTAP現象の細胞初期化の仕組みを解明してもらいたいものである。

 2016年10月7日の朝日新聞記事に『ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった大隅良典・東京工業大栄誉教授(71)は7日、同大で講演し、「日本人のノーベル賞受賞者が毎年出ていることで浮かれている状態ではない」と、短期間に研究成果を求める日本の現状に警鐘を鳴らした。』との事だが、我々も長い目でSTAP 現象の解明を見守っていきたいものである。