Stap事件 ― 若山氏率先したSTAP論文撤回の謎について ③

=== 若山氏の「特殊な手技」とは何だったろうか? ===

tea*r*akt2氏が自身の2014年8月のブログで 掲載し論評した記事がある。

この記事での5人(池田清彦、丸山篤史、榎木英介、竹内薫、緑慎也の各氏)の対談は、当時としてはその科学的なSTAP論文批評は読者にとって尤もらしく語られ、小保方氏の捏造を想起させるものとなっていることが分かる。

しかし、現在の我々の知識からすれば、対談における議論の対象は「若山氏のパート」のSTAP幹細胞の実体が真かどうかということで、興味ある話題として読むことができる。

先ず、1 TCR再構成がなかったことについて」と題して、STAP幹細胞がTCR再構成のあったSTAP細胞由来のものではない事を述べあっている

そして、「2 ES細胞、TS細胞混合可能性について」と題して、STAP幹細胞の実体を述べあって、小保方氏が都合良く捏造していると決めつけている。

小保方さんと表現されているところを若山さんに置き換える方が、今は対談として適切ではないかと私は思うのである。

その部分を若山さん置換して、語られた文章を記載してみよう。

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2 ES細胞、TS細胞混合可能性について 

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竹内 幹細胞になったのはES細胞で、胎盤になったのはTS細胞だった・・・・・

丸山 個人的には、実験に応じて、データを作るための細胞を替えていたのではないか思っています。ひとつの細胞がすべての実験を説明するのではなく、欲しいデータを作るための細胞をその都度あてがっていたと考えたほうがいいのかな、と。そうなると、若山さんは故意ですよね

竹内 STAP細胞を作る全工程を確認しているのは若山さんしかいない。ということは手品と同じですね。後ろから見たらタネがバレしてしまうかもしれないが、舞台の正面からだけならバレない。

 今のところ、ES細胞、ES細胞とTS細胞の混ざり物、マウスの脾臓から摘出したそのままの細胞を使い分けたという説が有力ですね。つまり、ES細胞と比べるときには脾臓の細胞を使う。そうすればES細胞とは違う細胞と言えます。万能性を示したいならES細胞、胎盤を作るならTS細胞を使ってデータを作ればいい。

(以下省略)

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 この対談の肝は、小保方氏が作った、TCR再構成が認められたSTAP細胞から誘導し、若山氏が樹立したSTAP幹細胞にTCR再構成の跡が認められないということは、

『STAP幹細胞は、STAP細胞から誘導(induction)された物ではない』

という当該分野の研究者や学者の現時点での常識のようである。

それならば、STAP幹細胞やFI幹細胞は何から作られたのかと疑問を持つことは至極当然の帰結で、従来の既存の万能細胞であるES細胞とTS細胞の力を利用することによるデータの偽装があったとしているのだ。

当時は、対談者達は、小保方氏がSTAP細胞作製からSTAP幹細胞樹立までの全てを成し遂げていたと思われていたのだろう。

元記事での竹内薫氏が発言した部分の、

「STAP細胞を作る全工程を確認しているのは小保方さんしかいない。・・・・・」

という間違った前提条件が、全く疑いも無く鵜呑みにされていた。

 

若山氏は、小保方氏に全くその「特殊な手技」を明らかにしていないことは「あの日」の陳述で明らかだが、その徹底ぶりは共同研究者としては考えられないし、指導的立場の人物としては特異性を感じざるを得ない。

ただし、幹細胞株については論文作成のための必要最小限の培養条件だけを小保方氏に伝えていたのだろう。

「あの日」第五章の中で次のように表現されている。

「若山先生の行った幹細胞樹立実験の再現をとるため、私はスフェアから若山先生がES細胞様に増殖させることに成功した特殊な培養液を用いて培養を試みていたが、たしかに若干はふえてくるものの、増えてきた細胞の形状も増殖能もES細胞とは程遠いものだった」

小保方氏であっても、幹細胞株作製の培養条件だけでは再現がとれないのは「特殊な手技」が伝えられていなかったからだろうと想定される。

当然、理研の笹井氏や丹羽氏他共著者達も知りえない事だった。

笹井氏も丹羽氏も小保方氏の細胞は確認しているが、若山氏のSTAP幹細胞は見ていなかった。

笹井氏の証言を振り返ってみよう。

  1. STAP細胞の表面に、万能性を示すマーカー(Oct4-GFP)が現れた。その過程は、10以上の視野から観察できる動画に取られていて、偽造は不可能。
  2. STAP細胞の大きさや形態は、今までに知られているどのような万能細胞とも異なる。
  3. 若山が行った実験で、キメラマウスの体内に胎盤ができた。他の万能細胞では、このような胎盤を作ることができない。

1と2は小保方氏のSTAP 細胞を自身で目で直接観察していて信憑性が高さを表現したのである。

3については当然、笹井氏は作り方の実態を見たはずもなく、若山氏の実験結果を信用したものである。

若山氏は本来なら小保方氏、笹井氏をはじめ共著者達と 議論すべきところだが、若山氏が率先して論文撤回を進めたのは、TCR再構成の矛盾から追及される危険性を察知して、若山氏が戦略的に使った「特殊な手技」を暴かれる前に取った苦肉の策だったに相違ない。

小保方氏が「あの日」に、不思議に思ったと書いた一節がある。

『論文のデータとして使用された細胞には、若山研に居た頃に若山先生からChip(クロマチン免疫沈降)は行ってもいいが、シーケンサーによる解析は行わないように指示が出されていたものがあった。Chipの実験では特定のたんぱく質が結合するDNA部位の情報しかわからないが、シーケンサーによる解析を行えば、その細胞の由来などが詳細にわかる。「なぜだろう」という疑問を持ちながらも、当時は指示にそのまま従っていた。後に次世代シーケンサーについても疑義が挙がる。この時に、次世代シーケンサーによる解析を深めていればその後の疑義は起こらなかったと思うと悔やまれる。』

これは細胞の遺伝子背景にかんする履歴を知られないように手を打っていたのではないか?

若山氏の特異的な研究の戦略性をうかがわせる。