Stap事件-若山氏の「特殊な手技」が記載されなかったSTAP論文 ②

(体細胞クローンマウスCumulinaに成功した若山照彦氏)

 f:id:ryobu-0123:20180129183920p:plain

「特殊な手技」を使って作製しているから、僕がいなければなかなか再現がとれないよ。世界はなかなか追いついてこられないはず」

は、世界の若山氏のクローンマウス研究上の深刻な問題点だったドナーの「核の完全な初期化」と彼の得意とするマイクロマニピュレータを用いた「核移植」の研究の延長線上に答えがあると私は思う。

 バカンティ研所属だった小保方氏の研究対象は彼女の見つけたスフェア細胞の多能性現象を研究することだった 。その一環としてキメラマウス作製を若山氏に協力を求めたわけだが、若山氏が快く協力に応じたのは、彼の専門とする核移植」による動物クローニングの分野への応用を考えていたからではないかと思うのである。

科学者と言うのは自分の得意な土俵で研究を深めていくものだ

自分の土俵に持ち込める材料を常に探し求めている。

若山氏が欲しかったのは「完全に初期化された細胞核」だった。

小保方氏のスフェア細胞は物理化学的刺激により細胞質が傷つきすぐに死んでしまうが、しかし初期化している細胞核さえ活かせればよい

それこそが「核移植クローニング」の「特殊な手技」だった。

そのことは、以下に述べる事柄から明らかになるだろう。


あのB6 系統のマウスを作った岡部勝氏(現大阪大学名誉教授)が運営に関わっている「SpermEgg Jornal Club」というメーリングリスト(ML)のmessageがある。

http://www.domoarigato.info/spermegg/Message.cfm?threadid=1030

今一度、このMLのmessageを味わってみと面白い。

STAPネーチャー論文発表直後に、べ氏(岡部勝氏)が常識外のSTAPに驚愕し、専門家らしく懐疑的姿勢に2報のネーチャー論文を分かりやすく紹介しているが、間もなく「Cumulina」というHNで若山氏が登場し、わざわざコメントを掲載した内容が興味深い。

本音を垣間見せながら、自己の得意とするのは核移植なのに、奇しくも核移植を要しない研究に関わってしまったが、あくまで小保方氏主体の研究を手助けしただけだ!という印象付けをしようとしている様子がうかがわれる。

 

何故、若山氏は「Cumulina」を名乗ったかと言えば、彼の記念すべきクローンマウスの名前だからだ。

柳町 隆造ハワイ大学名誉教授(1928年8月27日 - )という人がいる。

(柳町隆造博士)

f:id:ryobu-0123:20180129184141j:plain 

柳町氏は、哺乳類の受精過程について一連の機構を明らかにし、生殖医療に広く用いられる体外受精IVF)・顕微授精(ICSI)などの受精学の世界的な権威である。

その柳町教授の下で留学生であった若山照彦氏が1997年、世界初のクローンマウスを作製することに成功したことは有名である。

その方法は「ホノルル法」と呼ばれ、現在はクローンマウス作りの標準法となっているが、最初に生まれたクローンマウスはその由来体細胞(cumulus cells: 卵丘細胞)に因んで「Cumulina」と命名されたのだった。

 

若山照彦氏を自己紹介した貴重な記事がある。

“第11この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?”. 中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室. テルモ科学技術振興財団.

https://www.terumozaidan.or.jp/labo/interview/11/index.html

質問形式で話題が繋がれていて読みやすい。

この記事を読めば、若山氏はクローンマウス作りの世界的権威で、核移植に欠かせないマイクロマニピュレータの特技を活かして、正に彼のライフワークとしての研究成果を上げてきたことが分かる。

下記の3つの質問に対する話は注目すべきことが書かれている。

・───でもなにか、他の研究者ではできないことがあったのでしょう。

・───それで、クローンマウスができたんですか。

・───クローンマウスをつくるのに失敗することはないのですか。

********************************************************************************************** 

(マイクロマニピュレータシステム)

f:id:ryobu-0123:20180129181833j:plain

核移植や、核を取り除く作業にあたっては、ピエゾドライブの操作音の変化を耳で確認しながら顕微鏡の画像を見て行う。ピエゾドライブのスティックの操作は足で行う。卵子の移動は口にくわえたピペットで行う。したがってピエゾドライブを用いた核移植には、鼻以外の全身を使い、相当な集中力と熟練の技が要求される

f:id:ryobu-0123:20180129180614j:plain

「当初クローンマウスをつくったときの成功率はわずか2%でした。ようやく生まれても、短命のものも多いんです。その原因は、成長したマウスのからだの細胞の核を卵子に移植するときに問題が起きるんです。

私たちのからだは60兆個とも言われる細胞でできていますね。これらの細胞は、最初は1個の受精卵からスタートして、いくつにも分裂して、眼や心臓や手足などそれぞれの細胞になっていきます。これまでは、それぞれの細胞に分化してしまうと、細胞はもとに戻れないと考えられていました。けれども、最近の研究でいろいろな方法、技術によって、何にでもなれる元の状態に細胞を戻すことができることが分かってきたんです。このように細胞を元の全能な状態に戻すことを初期化といいます。パソコンを最初の状態に戻すことを初期化というけれど似たようなものですね。

マウスの体細胞からとった核を卵子に移植したときも、核を完全に初期化しないと、ちゃんとしたクローンマウスが生まれないことが分かってきました。成功率が低いのはこの初期化が不完全だったからです。そこで、いろいろ工夫して、初期化を促進するようにして、いま成功率は6%くらいまで上がっています。」

**************************************************************************************************

 若山氏は、これまで開発してきたマイクロマニピュレータによる「核移植クローニング」の「特殊な手技」を用いて、核を抜いた卵細胞に、小保方氏のスフェアの核をインジェクションしてES細胞に変換したのではないだろうか(要するにスフェア細胞核移植ntES細胞である)。

尚、「スフェア細胞塊を切り刻んで注入」するのは「核移植クローニング」の手技の1つかもしれない。

こうしてスフェア細胞のクローン細胞を、健全な細胞質をもつ新たなSTAP細胞として用いれば、従来のES細胞と同様に増殖性を示し、キメラマウスができ、幹細胞株化も出来ると発想し、若山氏はそれを実現していったのではなかろうか。

 

私と同様な考え方は、既にしたらば掲示板「STAP問題の全解に向けて」の中で語られているので参考になるだろう

http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/study/12348/1492994857/

 

(参考)「SpermEgg Jornal Club」

********************************************************************

No. 2163 (2014/01/29 10:08) べ 

http://www.nature.com/nature/journal/v505/n7485/pdf/nature12968.pdf

夜のニュースで紹介されていましたが説明が何のコッチャラ?だったのでObokataという名前とNatureで検索して原典を読みました。

 

正真正銘超弩級の驚愕です!! 「トリビアの泉」風に紹介すると 「細胞をPH5付近で25分間処理するとES細胞みたいな幹細胞ができる。」しかも10^6個あたりとかそんなケチくさい率ではありません。半分くらいの細胞が初期化されるのだと書いてあります。

 

え〜っ???PHをさげて25分処理するだけで半分が!!! え〜っ???そんなバナナ!!!

 

この幹細胞は‘stimulus-triggered acquisition of pluripotency’ (STAP)細胞と名付けられています。レンチウイルスベクターの構築に汗を書いている先生方!去年の夏にScienceに載った化学物質でiPSを試しているヒト(わたしもその一人!)などいろいろおられるとおもいますが、高い試薬を買わなくても、レンチベクターが動物から排出されていないことを証明してP2グレードダウンとかそんなことに時間を使わなくても、ただpH下げるだけでいいみたいですよ!皆さんご苦労さんでした。

 

要するに刺激を与えると細胞が持っている初期化システムが働いて初期化するのではないか?という風に考えているようです。Intrinsic にそのような経路が存在するとすればiPS以上に細胞分化に関する概念を変革させる発見だとおもいます。Obokita先生スゴイ!(まだ、お若い女性の先生です!)

 

STAPとESが比較検討されていますが、まずSTAPはESのように増えずにむしろ培養すると死亡?するようです。培養7日目にはOct4+の細胞塊があるので、これをカットしてブラストにインジェクションするとキメラができる。またテトラプロイドのブラストにいれて100%キメラ形成能も確かめています。

 

でも増えないと扱いにくいですし、卵子にインジェクションして体に戻してからは増えるわけなので、ちゃんと増やし方も検討してくれています。 ACTH-LIFメディウムの中では増えてくれるポピュレーションが取れるそうです。この時ES 細胞マーカーのEsrrbの発現も始まるようなので、STAPがES化したということだと思います。こういう状態のをSTAP-SC(stem cell)と呼ぶそうです。本当におどろきました!

 

 

No. 2164 (2014/01/29 10:27) べ 

http://www.nature.com/nature/journal/v505/n7485/pdf/nature12969.pdf

ObokitaさんのNは連報になっています。STAP細胞はESよりももっと初期化されたスゴイ細胞だというはなしです。こっちはWakayamaさんがラストオーサーです。

 

基本的にES細胞胎盤に分化しません(ごくごく稀には分化することを目撃したことはあるのですが、実験で証明できるレベルではありませんでした)。でもできたてのSTAP細胞をブラストインジェクションすると胎盤にも寄与したそうです。1週間でできるのも魅力的ですねえ!

 

最初の論文ではACTH-LIFで培養することにより増えないSTAPを増殖できるSTAP-SCというES様の細胞に変化を促していますが、その場合には胎盤への分化能がなくなります。そこで、この論文ではFgf4を加えたtrophoblast stem-cell mediumで培養すると体にもトロフォブラストにも分化出来る幹細胞(FI-SC)ができるということです!

 

結局最初にできるSTAPは原始的な幹細胞でそのままで体細胞にも胎盤にもなれる。一方STAPをACTH—LIFで培養するとES細胞ができ、Fgf4を入れることによって体細胞にも胎盤にもなれるFI-SCができる。ここからES細胞にするにはLIFだけでいいと、そういう細胞系譜がかけるようです。

 

心筋梗塞の患者には壊死したあたりで生き残っている細胞をPH5の条件を25分さらせば、あら不思議!心筋が蘇生てなことがあと何年かしたら出来上がるのかも知れませんね。脊損の患者さんも最初にグリアができるのでそのあと神経ができなくなるのでダメとか(スイマセンちょっとうろおぼえです)そんなことだったように思いますが、初期化できるのならダメージを受けたあたりを酸性化すればグリアも神経幹細胞に再変化!いろんな応用が考えられます。発生学だけではなくて、医療にも直結しそうな超大発見だと思います。みなさんも是非コメントをお寄せ下さい!

 

No. 2172 (2014/02/02 02:51) Cumulina 

べさま コメントをありがとうございます。核移植を一番の専門にしているのに、核移植のいらない初期化方法を発表して、自分で自分の首を絞めている論文の関係者です。今回の小保方さんの発見はすごすぎたのかレフェリーに相手にしてもらえず、ずいぶん苦労しました。いまマスコミでリケジョとか違う方向で話題になっていますが、本当にすごい研究者で膨大な実験を徹夜続きで行いました。論文ですが、サプリにたくさんのデータが乗っていますが、それもほんの一部です。たとえば細胞の樹立がなかなかできず、STAP細胞を注入したキメラ胚を使って初めて樹立に成功したデータは、当初それだけで論文にするつもりでしっかりした表と解析を行っていたのですが、途中から直接簡単に樹立できるようになり、葬り去られました。実験中にどんどん発展していったのでしょうがないですが、STAP細胞の将来がすごく楽しみです。