Stap事件 ―  小保方氏の研究パートは有益な事実④          Dr. Irene de Lazaroの相澤論文の査読評価内容

 ☆中村 公政氏のブログ「白鳥は鳥にあらず」にイレーヌ・デ・ラザロ:相澤真一「STAP現象の再現試験の結果」レビュー2016/8/22 を私なりに読解し、意訳してみた。

(中村氏の訳文を随分参考にしたので併せてご覧ください)

http://lunedi.sblo.jp/article/176889260.html

結論を言うと、彼女が指摘した事は科学的視点に立つと、疑問の残る相当重要な宿題が残されているのは確かである。特に、小保方論文のオリジナルな実験方法との齟齬が暴露されている点は当該研究者としては興味を引くと思われる。

http://f1000research.com/articles/5-1056/v1 参照

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査読レポート 2016年8月22日         f:id:ryobu-0123:20160920185347j:plain                     
イレーヌ・デ・ラザロ(Irene de Lazaro)、 Division of Pharmacy and Optometry, School of Health Sciences, Faculty of Biology, Medicine and Health, The University of Manchester, Manchester, UK

 

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2014年の小保方等の2つのNature論文は体細胞から多能性細胞を生成させる新規手法を記載しました。

その手法は機械的破砕とか酸処理のような刺激条件に晒すというものである。

そのようなプロセスは刺激惹起性多能性獲得(STAP:stimulus-triggered acquisition of pluripotency)と命名されたが、その研究は間もなくいくつかの確実な実験過誤や研究不正上の理由で撤回された。

相沢博士はSTAPという多能性を持つらしい細胞(これは理研の科学検証チームの監督監視下で小保方氏が生成したものだ)が果たしてマウス胚の発育に寄与するのか、そして更に本物の多能性細胞と考えうるかどうかを論述している。 

この研究で達成した結論、すなわちSTAP細胞なら機能するはずの多能性は再現しないことが、与えられたデータによって明確に裏付けられている。つまり、STAP細胞の寄与すべき事が回収胚の全てにおいて認められなかったということである。異なる組織への寄与を究明するSTAP細胞を注入した胚の数は十分に多いものである。更に、本研究設計は大変系統的であり、(キメラ現象の)結果に変化をもたらすいくつかの可能性の高い源流要因、すなわちストレスの刺激の要因、マイクロインジェクション操作前に細胞を切り刻む技術手法、それから注入時と取り出し時の胚のステージ等を考慮してキメラ現象を説明している。しかし、私見ではあるが、それでもなお相沢博士のこの研究を有益にする僅かではあるが、示唆する事や明白な事を以下に見つけて貰いたい。 

実験計画: 

撤回した小保方らによる研究では、細胞分化マーカーCD45陽性(CD45+)脾臓細胞を、STAP細胞を生成するための出発細胞(source)としてフローサイトメーター(FACS)を使って選定した。本研究では、CD45で分類して細胞を分取することは省略し、代わりにリンパ球の特定の単離が可能とされる商品Lympholyteが使用された。このことは検証の基本となるオリジナルのプロトコールの変更であり、それは出発細胞群の性質に相違が生じるかもしれないということである。したがって、著者はこの変更の背景となる理由を説明できなければならないと思う。 

キメラ実験に今回利用したCAG-GFP遺伝子移植マウスの系統が、現在は撤回された以前の研究において小保方らが使用したものとは異なっていたことが記載されている。異なる系統を選択する理由があったのか? 

・もともと小保方等の研究では、STAP細胞塊はE4.5段階の胚に注入した。しかしながら、本研究では、E2.5またはE3.5段階で胚に注入された。このパラメータは、キメラ現象のより高い程度を試そうと変化させたか?

実験設定でのこうした変更についての説明があればもっと明確で望ましかっただろう。                                                                         

データの陳述、取扱い及び考察: 

・低pH処理後のOct-GFP遺伝子導入脾臓由来の細胞塊の頻度(表1:このことについて「低pH条件(HCIまたはATP)ないしマウス達の遺伝的背景のいずれにおいても緑色蛍光シグナル発生頻度において、全く明確な違いが見られなかった」と本文中で述べられているが、例えこの陳述が統計的試験によって支持されているとしても、強く言い過ぎだろう。著者はこのデータに関して統計分析を実施したのか? 

・細胞塊の緑色と赤色蛍光: 著者は検出された信号が自家蛍光の結果であったことに言及しているようだが、そのことはこの研究を再現しようと試みている他の研究者によって、既に、実際に指摘(Tang et al. 2014; De los Angeles et al. 2015;の最後のコメントを参照)されてきたことだ。しかしながら、このことは本文中に明確には述べられてはいない。尚、更に付け加えて言えば、緑色の自家発光の疑念は、抗GFP抗体を用いるか、qPCRによるGFPmRNAとか、ウェスタンブロットによるGFP蛋白質のレベルを測定によって、容易に払拭できただろう。もしも試料が依然として有効ならば、左様な研究すれば、きっとその問題を明確にすることができることを私は著者に強く推奨する。野生型マウス系統由来の細胞塊の研究に含めれていれば、やはりまた、この曖昧さを避けていただろう。 

・キメラ研究のためSTAP細胞を生成するマウスの遺伝的背景: キメラ研究に使われたCAG-GFPマウスはC57BL/6ホモ接合の背景で育成されたと本文中に最初に述べられている。しかしながら、本文中や表2も同様だが、最後に強調されていることは、C57BL/6と F1(C57BL/6x129)の両方が含まれていた事である。

それらはまた細胞隗の分析評価のためOct-GFP遺伝子導入を維持するために選択された背景であるはずなので、この事は著者が必要とする明確性が紛らわしくなっている。 

・丹羽論文の結果: 著者は何回か丹羽論文(2016)の結果に言及している。丹羽はまた理研の科学検証チームのためSTAP現象の再現性を調べた。だが、丹羽の研究は、厳格な監督下で小保方が作った同じSTAP細胞で行われたかどうかは明確に特定されてはいない。qPCR、免疫染色及びFACSデータが議論されているが、開示されて無いし、丹羽の研究に読者の関心が向けられるから、そのような明確化は重要なのである。 

少なくとも二つの独立した研究が、理研外部の機関で実施されSTAP論争を明確化することを目指してきて、(Tang et al. 2014, De los Angeles et al. 2015) この論文で提示されたものと同様の結論に達している。特に自家蛍光の問題はDe los Angels 等の論文で広範に精査されてきた。私はこのような研究において観察されたことを一寸考察することによって本稿は補強されるだろうと確信する。

 筆者注: 相澤論文の引用文献1) →題名「弱酸処理では新生児の体細胞から多能性幹細胞を誘導できない」(要約)小保方論文の酸系処理の方法で、新生児の脾細胞または肺線維芽細胞からSTAP幹細胞を産生することができなかったことが報告されている 。

(以下省略)

f:id:ryobu-0123:20160920185417j:plain アイリーン ラザロ博士 (Dr. Irene de Lazaro)

 ( 訳:ryobu-0123 / 2016.9.21 )

再生治療分野の主任研究員。

2009年に(特待生で)スペインマドリード、アルカラ大学で薬学部の修士号を取得。卒業後、彼女は《バルセロナに本社の大手地方銀行La Caixa (ラ・カイシャ)のボランティア財団》Obra Social la caixa(オブラ・ソシアル・ラ・カイシャ)からフェローシップ(特別研究員の称号)を得て、薬物送達学の理学修士を終了。ナノメディシン研究室に参加、その後UCL(University College London)薬科大学に席を置き、3次元腫瘍モデルで抗体抱接型カーボンナノチューブの内在化を研究。再生医療の博士課程の学生としてUCLで彼女の研究を続ける。博士論文では、彼女は組織の修復、再生の基本となる生体細胞リプログラミングの概念を究明。生体内再プログラミングを専門とする再生治療の研究員としてマンチェスター大学所属のナノメディシン研究室で、傷ついた組織修復改善に取組む。

 Dr. Irene de Lazaro, Research Fellow in Regenerative Therapeutics
Irene obtained her Master’s degree in Pharmacy (with Distinction) at the University of Alcalá (Madrid, Spain) in 2009. After graduation, she gained a fellowship from Obra Social LaCaixa to complete a MSc in Drug Delivery. She joined the Nanomedicine Lab, then based at the UCL School of Pharmacy, to investigate the internalisation of antibody-conjugated carbon nanotubes in three-dimensional tumour models. She continued her studies in UCL as a PhD student in Regenerative Medicine. In her thesis, she explored concept of in vivo cellular reprogramming at the fundamental for tissue repair and regeneration. She followed the Nanomedicine Lab to the University of Manchester as a Research Associate in Regenerative Therapeutics focusing on the use of in vivo reprogramming to enhance rehabilitation of injured tissue.

 

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https://www.facebook.com/groups/1393691510903463/

Facebookの公開グループ「がんばれ、小保方晴子先生!」の記事より

渋谷一郎氏による、デ・ラザロ博士指摘事項の簡潔明快なポイントと評論を、此処に掲載させてもらいました。(2016.9.21 ryobu-0123) 

これは、相澤論文で紹介された、小保方さんを交えた理研の「STAP現象の再現実験」についての、デ・ラザロ博士のかなり辛辣、痛烈な批判ですね。
批判個所を拾っていくと(文章は訳文をもとに適宜変更しました)

〈実験計画〉
①小保方らによる研究では、STAP細胞を生成するための出発細胞(source)として、細胞分化マーカーCD45陽性(CD45+)の脾臓細胞をフローサイトメーター(FACS)を使って選定したが、本研究では、CD45で分類して細胞を分取することは省略し、代わりにリンパ球の特定の単離が可能とされる商品Lympholyteを使用した。→検証の基本となるオリジナルのプロトコールの変更であり、出発細胞群の性質に相違が生じるかもしれない。著者はこの変更の理由を説明しなければならない。
②キメラ実験に利用したCAG-GFP遺伝子移植マウスの系統が、小保方らが使用したものとは異なっていた。→異なる系統を選択する理由があったのか?

〈データの陳述、取扱い及び考察〉
③低pH処理後のOct-GFP遺伝子導入脾臓由来の細胞塊の頻度について、著者は「低pH条件(HCIまたはATP)ないしマウス達の遺伝的背景のいずれにおいても、緑色蛍光シグナル発生頻度に明確な違いが見られなかった」と述べているが、このデータに関してきちんとした統計分析を実施したのか?
④著者は検出された信号が自家蛍光の結果であったことに言及しているが、緑色の自家発光の疑念は、抗GFP抗体を用いるか、qPCRによるGFPmRNAとか、ウェスタンブロットによるGFP蛋白質のレベルを測定によって、容易に払拭できただろう。
⑤キメラ研究に使われたCAG-GFPマウスはC57BL/6ホモ接合の背景で育成されたと最初に述べられているが、本文中や表2もC57BL/6と F1(C57BL/6x129)の両方が含まれていた。
⑥著者は何回かSTAP現象の再現性を調べた丹羽論文(2016)の結果に言及しているが、丹羽の研究は、厳格な監督下で小保方が作った同じSTAP細胞で行われたかどうかは明確に特定されてはいない。

だいたいこんな感じですが、ryobu-0123さんが指摘しているとおり、「小保方論文のオリジナルな実験方法との齟齬が暴露されている」わけで、①〜⑥のデ・ラザロ博士の指摘が正しければ、あの小保方さんを交えた理研の検証実験とは何だったんだということになりますね。
なお、この一連の動きの背景について、中村公政さんが興味深い指摘をしています。
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あまり詳しく書く必要はないと思うが、沈黙のうちに忘れられていた相澤論文をF1000Resercherで再び脚光を浴びさせようとしたグループが存在しただろうと推定できるということである。
「F1000Reserchとは:テイブレーク氏に寄せて」
http://lunedi.sblo.jp/article/176927535.html
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これは、小保方さんを交えた理研の「STAP現象の再現実験」の虚偽性をアピールすることが、相澤論文がF1000Reserchに再掲載されたそもそもの目的だったということでしょうか?

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