Stap事件 ― 若山氏が率先したSTAP論文撤回の謎について ①

若山氏が、2014年3月10日に、わざわざ記者会見してSTAP論文撤回を呼びかけたのは、本当に小保方氏のテラトーマ画像のミスにあったのだろうか?

そのミスは若山氏にとって格好のチャンスだったことを説明しよう。

但し、少々話は長くなる。

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2014年7月、nature 誌に掲載したSTAP論文の取下げ理由が下記nature文書に掲載されている。

そして、7月23日に、取下げの理由が改定されたことが示されている。

http://www.nature.com/nature/journal/v511/n7507/full/nature13598.html#supplementary-information

Nature | Retraction

Retraction: Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency

分かりやすく原文を和訳しておこう。

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いくつかの重大なエラーが私たちアーティクル及びレターで発見されていて(http://dx.doi.org/10.1038/nature12969)、理研は綿密な調査行った。理研の調査委員会は、いくつかの過誤を不正行為(補足データ1と補足データ2を参照)として分類しています。

理研の報告書で考察されていない、著者達によって識別された追加の過誤は以下に示す通りです。

    1. レターのFig.1aおよびbは凡例に示されるなES細胞によるキメラ胚とSTAP細胞によるキメラ胚の比較になっておらず、共にSTAP細胞由来のキメラ胚である。
    2. ア-ティクルの拡張データFig.7dとレターの拡張データのFig.1aは同じ胚の異なる画像であって盆例に示すような2倍体キメラ胚と4倍体キメラ胚ではない。
    3. レターのFig.1aの説明に間違いがあります。Fig.1aの右のパネルは、カメラレベルで「長時間露光」画像ではなく、デジタル的に強化されたものです。
    4. レターのFig.4bにおいて、STAP細胞とES細胞が間違って、あべこべに表記されている。
    5. アーティクルにおいて、STAP幹細胞(STAP-SCs)の一つのグループは、129/SVsとB6それぞれ背景に18番染色体に同一のCAG-GFPが挿入担持され、若山研で維持管理されていたマウス系統を交配して得られたF1雑種の脾臓から誘導されたSTAP細胞由来であるかのように報告されました。しかながら、8株の STAP幹細胞系統のさらなる分析によって、それらは、同じ129×B6 F1遺伝的背景を共有してはいるものの、GFP挿入部位が異なっていることが判明。さらに、STAP細胞の誘導のために使用したマウスは、GFP導入遺伝子についてホモ接合性であるが、STAP幹細胞はヘテロ接合である。GFP導入遺伝子の挿入部位が、若山研にて保持されているマウスやES細胞のそれと符合する。左様に、ドナーマウスと報告されたSTAP幹細胞間には、遺伝的背景と導入遺伝子挿入部位において不可解な差異が存在する

 

私たちは、アーティクルとレターに過誤があったことをを謝罪する。これらの複数の過誤が全体として、研究の信頼性を損ない、STAP幹細胞現象が本物かどうかの疑念が生じた。進行中の研究は新たにこの現象を調査しているが、現在、多岐にわたり検出された過誤の性質を考慮すると、両方の論文を撤回することが適切と考える。

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此処に述べられた論文取下げ根拠の5項目のうち、1,3及び4はレター論文の図に関わる齟齬が示されている。

2はアーティクルとレターでのキメラ胚に関わる図の齟齬である。

これらの図の問題は、キメラマウス以降の若山パートの問題で、小保方氏が写真をデータを採ったものとは考えにくいものであるし、若山氏が特に注意深く査読を要するところで、彼が正規データを以て是正し、説明責任のある過誤だろう。

さて最も肝心な撤回理由が5である。

2014年6月16日に、若山氏が維持管理していたマウス系統とは異なる外部のマウス遺伝子がSTAP幹細胞から検出されたとして、小保方氏に渡したマウスでないとの報告をし、あたかも小保方氏が外部からポケットに入れて持ち込んだとの邪推を、わざわざ記者会見で発表した。

ところが、2014年7月22日に、上記記者会見での発表は過ちで、若山研に維持管理されていたマウスであることが判明し理研のホームページに発表されたのだった。理研の示した見解部分を以下に示す

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1.若山氏が提供したGFPにより光るマウスから、小保方氏がSTAP細胞を作製し、それを若山氏が受け取ってSTAP幹細胞株を樹立したとされる。保管されていたSTAP幹細胞株の解析から、前回の報告で、その由来が不明とされていたFLS STAP幹細胞株について、CAG-GFP遺伝子及びAcr-GFP遺伝子が並列に染色体に挿入されていることが判明した。

2.CAG-GFP 遺伝子とAcr-GFP 遺伝子が共挿入されたマウスは大阪大学岡部研究室で樹立され、その系統はCDB の若山研究室に分譲され維持されていたが、FLS 細胞株(STAP幹細胞)と当該Acr-GFP/CAG-GFP マウス(岡部研由来マウス)が、同じ染色体部位にGFP 遺伝子の挿入を持つかどうかは現在調査中であり、明確な結果が得られ次第報告する。

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理研の上記の見解が示された翌日の7月23日、理由5に上記理研の見解よりも踏み込んだ理由表記がなされた。

即ち、若山研に維持管理されたマウスだが、ES細胞と同等の遺伝子背景をもつことを述べ、STAP細胞ES細胞で偽装したことを強く示唆する表現にしている。

勿論、この訂正は若山氏がこっそりとnature 誌に提出したものだ。

撤回理由5は、共著者が同意した当初の「STAP幹細胞は若山研のマウス系統でなかった」理由を、共著者に同意を得ずに、勝手に若山氏が書き換えたものであった。

 

この論文撤回の経緯は小保方氏の「あの日」第十一章「論文撤回」に詳しく、小保方氏の立場で詳述されている。

この論文撤回騒動は、共著者の1人の若山氏が1人舞台で、マスコミ相手に、いかにも公明正大に、自身が樹立したSTAP幹細胞の分析を論文発表後に実施し、使用したマウス系統と異なる遺伝的背景が異なることを公表して、STAP幹細胞のキメラや胎盤形成などの現象はES細胞の現象だったと世論を誘導しながら論文撤回を画策したものだった。今となっては明らかな偽装事件だったと思われる。

「あの日」第十一章の中に『その後、バカンティー先生とネイチャー編集部との話し合いの結果、「STAP幹細胞のマウス系統のデータに関しては研究室の責任者であった若山先生しか情報を持ちえない。その人が、データが間違っているとネーチャーに連絡を入れている。STAP肝細胞のデータがアーティクルに入ってしまっている以上、仕方がない。(以下略)」と連絡が入った。』とある。これこそが共著者がレターと共にアーティクルも撤回に同意した背景だった。

 

この論文撤回騒動の根底にあることは、『STAP幹細胞』の『実験プロセス』上の最も基本的な『遺伝子情報の齟齬』である。

若山氏は2011年11月~2013年2月の1年3カ月の間にSTAP幹細胞株を43株も樹立しているのだ。

この間、STAP幹細胞の遺伝子情報を全く解析しなかったというのは驚きである。

何故、幹細胞の遺伝子解析をnature論文後に行ったのか?

世界の若山博士ともあろう人が随分と大雑把な研究をしたものだなと思うのである。

考えてみれば特許戦略面からであれば、作製方法とパーフォーマンスの新規性を明確に訴求し陳述すればよい。

このことは新技術の特許戦略を優先した結果ではなかったかと思う節がある。

若山氏の頭の中では、STAP 幹細胞株化は特許が重要で、兎に角、仮置きのSTAP幹細胞現象を表現して、本格的な実用化の手段は後回しにしていたのではないだろうか?

「あの日」には小保方氏のスフェア細胞塊の現象論的な研究とは別に、若山氏はキメラマウスを作るだけでなく、iPS細胞に対抗する実用性の高い幹細胞株樹立を独自に進め、特許対策に積極的だったことが示されていることがそれだ。

産業的に甚大な効果をもたらす先行技術との比較優位性を、審査官にアピールするために、データに下駄を履かせたり、見やすいデータに加工したりするばかりでなく、最大限に権利化したいレベルまで拡張したデータを明細書に盛り込むのは特許の常套手段となっていることは暗黙の事実である。

「あの日」に書かれている若山氏のデータ仮置きは、特許請求の範囲をカバーするために必要なデータ作成の戦略的手法ではなかっただろうかと思う。

即ち、キメラマウスの作製やSTAP幹細胞とFI幹細胞の樹立、そして光る胎盤のデータの取得のために若山氏は特殊な手段を用いていたのではないだろうか?

これはどういうことかを想像してみよう。

まず、以下に示すのは若山氏の成果を要約したものである。

☆ 若山氏が選定したマウス(小保方氏には129系統マウスとB6系統マウスの雑種F1の生後一週間の赤ちゃんマウスでOct4-GFPマウスと伝えただけ)の脾臓から得たリンパ球をFACSにより分画したCD45陽性細胞から小保方氏が作製したOct4陽性(GFP発現)スフェア細胞塊(=STAP細胞)を切り刻んで胚盤胞に移植して若山氏はキメラマウスを作り、緑に光る胎盤作製に成功した。

☆☆ 更に、キメラマウス作製後に残ったSTAP細胞でSTAP幹細胞株を樹立した。

☆☆☆ そして、胎児にも胎盤にもなるFI幹細胞を樹立した。

このように若山氏が、小保方氏の増殖能の無いSTAP細胞を無限増殖可能なSTAP幹細胞株及び胎盤にもなるFI幹細胞株を実現したことは、その実用性上で医療または畜産等に甚大なる産業的価値をもたらす基盤が確立したことになったのである。

 

しかし、当時はバカンティー研のポスドクの小保方氏のオリジナリティーを無視できない若山氏にとって、小保方氏を若山研に取り込めれば、若山氏の操縦ができたが、皮肉にも理研が小保方氏を迎い入れる事態になった。

というのも、STAP細胞からSTAP幹細胞の全てに小保方氏が主体であるとの誤解があって、若山氏は小保方氏を指導し援助しただけの役割と思われていたからだろう。

 

若山研において小保方氏が無給の客員研究員時代に行われた研究で、なかなか小保方氏の論文は採用されない中で、唯一特許戦略で幹細胞株化の権利だけは若山氏が確保したかったのだろうと思う。

しかし、小保方氏を理研が確保するとともに、笹井氏が論文を見事に仕上げてしまった。

このとき、このまさかの出来事に、若山氏はどれほどの不安を覚えていたことだろう。

論文はことごとく失敗していたにもかかわらず、さすがに笹井氏はあっという間に仕上げてしまった。

特許対策のために、かなり勇み足のデータ作りや、特殊な手法でキメラや幹細胞株をでっちあげたことが耐え難い後悔になったのではなかっただろうか? 

まともにこれらの事象を再現させる方法を考えながら、苦悶の毎日を過ごしていた事だろう。

 

若山氏は小保方氏のSTAP細胞再現性のあることは知っている。

しかし、若山氏のキメラマウス、STAP幹細胞、FI幹細胞そして光る胎盤STAP細胞との関連付けが無いものだということは彼自身が一番良く判っていることだ。

 

STAP論文がnature誌に載ることは本来喜ばしいことだが、若山氏には苦痛だったに違いない。

2014年3月10日に、論文画像不正(テラトーマ博論写真)が見つかったときに、論文撤回の記者会見こそ若山氏にとって絶好のSTAP細胞からの撤退作戦のチャンス到来だったのではないだろうか。

その時に、STAP幹細胞の遺伝子解析を手配したのは何故かと言えば、STAP細胞を小保方氏に作らせたマウスと異なる遺伝子を持つことは若山氏には当に分かっていたはずなのだが、客観的な解析による新たな事実を示す演出によって、小保方氏の側に不正があったかのごとくに注目を仕向けさせ、自身はこの不正に無関係を装うためだったのだろう。

 

一方、小保方氏は自己のパートである、若山氏指定のマウスからOct4陽性スフェア細胞塊(=STAP細胞)を作成し提供する作業で若山氏の研究を支援していただけである。

若山氏の独断的な論文撤回会見の意図や、キメラマウスや幹細胞株化には関れなかったために、マウスの遺伝子と幹細胞等の遺伝子の齟齬の発表を知ることは小保方氏にとっては寝耳に水のことだったのである。

 

(但し、以上のお話は、小保方氏のパートが正常なものだったと確定していることを前提に考えた一つの仮説にすぎない)

 

次回は、若山氏が恐怖を覚えて論文撤回を決意した背景を考えてみようと思う。

 

(注)2017.1.24 分かりにくい表現を修正しました