Stap事件 ―  小保方氏の研究パートは有益な事実⑨          === 若山氏が残した研究成果と問題点 ===

2011年4月6日~2013年2月28日まで、小保方氏が理研CDBゲノム・リプログラミング研究チーム(若山研)の客員研究員時代に、若山氏は、Oct4陽性スフェア細胞を活かし、
「キメラマウス作製こそが最重要なデータであり、iPS細胞のような(無限に増殖できる)幹細胞ができるかもしれない可能性を追うことを目的とすべきだ」
との構想に強い執念を持っていたことが、小保方著「あの日」から窺い知ることができる。
彼にとって、iPS細胞に対抗しうる全く別のメカニズムの万能細胞実現で一旗揚げる可能性を強く抱いていたということだろう。
そして、その目論見は僅か1年半で、キメラマウス作製に成功し、STAP幹細胞株樹立し、iPS細胞以上の万能性に繋がるFI幹細胞株樹立を成し遂げる。
 
当然、nature 論文の脚光は、若山氏の成果部分にある。
理研が飛びつき、日本の学会そして世界が、期待と疑いの目で注目した。
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ノフラー氏が論文不正問題発覚直後の2月末頃に、若山氏にES 細胞混入の疑惑を質問している。若山氏はES 細胞混入環境は無く、STAP再現性問題から逃げない姿勢を示した。 
しかしながら、最も必要な、細胞生物学に必須のマウス遺伝子系統の事前把握と管理が若山氏に欠如していたことは、事後にSTAP幹細胞の解析を慌てて依頼していることから明白である。
「材料の履歴管理」が「科学的説明の重点要素」で、成果物の土台なのだ。
自らが研究開発したSTAP幹細胞株にES細胞混入の余地はないと明言した言葉は、後からどんどん指摘され遺伝子解析されていく意外な遺伝子背景に翻弄され、ES細胞混入を否定できない事態に追い込まれ、あっさり撤回する程に困惑した。
それは自らが徹底管理し把握しておくべき使用したマウス、卵(胚)の遺伝的履歴が曖昧で、複雑に交錯する試料の科学的説明根拠を喪失したからである。
あれほどES細胞はあり得ないと言った若山氏は我身に降りかかるES細胞疑惑を払拭できる見通しを消失し、科学者にはあるまじき異様な行動で、小保方氏の無力を良いことにして全責任を転嫁して逃げたとしか思われない。
それがStap事件拡大の根幹となったと思うのである。
 
参考に、以下に簡単に若山氏の成果と問題点を列挙した。
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【若山氏の成果と問題点】

(論文の要であるキメラマウス作製と無限増殖する幹細胞株樹立計画)
 
A.若山氏が決めた実験方法
 
a) 若山氏が、雑種の赤ちゃんマウスの準備とそれを使ったOct4陽性スフェア細胞の作製日程決定
b) その赤ちゃんマウス※を若山氏から1週間前に渡されて、小保方氏が、Oct4陽性スフェア細胞の作製して若山氏に渡す
             ( ※ 129XB6F1マウス ) 
c) 若山氏が、卵の準備、移植するお母さんマウスの準備し、若山氏が、キメラマウスを作り、STAP幹細胞株及びFI幹細胞株の樹立実験を実行
 
B. 成果
 
① Oct4陽性スフェア細胞塊(STAP細胞塊)をバラバラの細胞にする従来法ではキメラマウス作製は困難と判明
② STAP細胞塊をマイクロナイフで切り刻んだ細胞塊を初期胚に注入することが決め手となってキメラマウス作製に成功 
③ ES細胞樹立用の培養液でSTAP細胞を培養することにより、STAP幹細胞株を樹立した。(「特殊な手技を使って作製しているから僕がいなければなかなか再現がとれないよ。世界はなかなか追いついてこれないはず」)
④   Oct4陽性スフェア塊(STAP細胞塊)から作ったキメラマウスには胎児と胎盤が形成されていることを発見
⑤ TS細胞の幹細胞培養する培地でSTAP細胞を培養して、FI幹細胞株を樹立
 
C. 発生したSTAP幹細胞に関わる不可解な問題点   *日付は全て2014年〇/〇
 
1 従来の細胞塊を酵素処理してバラバラにした細胞はキメラマウスにならず、切り刻んだ塊だと成功した
2. 若山氏が小保方氏に渡したマウスと異なるマウス系統の遺伝子が2株の幹細胞に見つかる。即ち、18番染色体にGFP挿入マウスを渡し、戻ったのは若山研には無い15番染色体にGFP挿入マウスの細胞(6/16)
      ⇒上記結果は間違いで、元々渡したマウスには15番染色体にGFP挿入された大阪大学作製で若山研飼育マウス(7/18)
      更に15番染色体遺伝子はアクロシン遺伝子(若山研でアクロシンGFP組込みES細胞を作製していた) ※
( ※ 7/22 NHKスペシャル「調査報告 STAP細胞 不正の深層」で放送 )
3. Oct4陽性スフェア(STAP細胞)には見られたがSTAP幹細胞にはTCR再構成が見られない
4. STAP幹細胞の全てにおいて8番染色体にトリソミーが認められる(遠藤高帆氏と東大それぞれの独自解析)
5. 遠藤高帆氏の解析考察から、FI幹細胞はTS細胞とES細胞が1対9の割合で混合したもののようだ
⇒12/19 丹羽仁史氏の重要な証言 (日経サイエンス古田彩記者の質問に答えて)
「(FI幹細胞培養条件で培養した場合)…我々が持っているES細胞に関しましては、特に形態変化を示すことなく、4~5回の継代後には全滅しています」→ES細胞はFI幹細胞の培地Fgf4では増殖しないことを証言
6. Oct4陽性スフェア(STAP細胞)から作った、キメラマウスの光る胎盤の桂調査報告が無い(ES細胞では説明不可現象)
⇒ 4/8理研STAP細胞検証計画記者会見で、丹羽仁史氏の重要な証言
「・・・・免疫染色等で確認すべきだとの意見もありましたが、まさにそういう手段を用いて、かつ胎盤実質細胞で発現するマーカーとの共染色をもって、確かにSTAP細胞由来と思われるGFP陽性細胞が胎盤組織にインテグレートしていることをみています」「はい、少なくとも、切片を顕微鏡で自分の目で見ました」
7. STAP幹細胞13株のGLSシリーズの性別が解析結果に関わらず、♂になったり♀になったり
8. 桂調査報告: STAP幹細胞株すべての正体はES細胞由来のものであると結論付けした(12/26)
 
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若山氏側の幹細胞の問題は深いものがあるが、小保方氏側の潔白はいずれ認知されるものだと思う。
 
尚、若山氏側には、いろいろな実験上の管理ミスなどがあったことは明白だが、若山氏の残した成果物や検証の中で指摘された様々な問題点に対して、科学的観点から解析データのみではなく、反証的な立証実験などによって、科学的な現象究明の材料として検討していくような、科学界の見方も出てきてよいのではないだろうか。